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書誌情報  要約  特許請求の範囲  発明の詳細な説明  図面の簡単な説明  図面

 【書誌情報】

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2008-12710(P2008-12710A)
(43)【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C  45/14     (2006.01)
   B29K  67/00     (2006.01)
   B29K 105/06     (2006.01)
【FI】
   B29C  45/14    
   B29K  67:00    
   B29K 105:06    
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2006-183989(P2006-183989)
(22)【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
(71)【出願人】
【識別番号】000206141
【氏名又は名称】大成プラス株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋浜町一丁目11番8号
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(72)【発明者】
【氏名】成富 正徳
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目10番5号 大成プラス株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直樹
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目10番5号 大成プラス株式会社内
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA25
4F206AD04
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD11
4F206AD16
4F206AD19
4F206AD20
4F206AD34
4F206AG03
4F206AG28
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB25
4F206JF05

 要約

(57)【要約】
【課題】電子機器の筐体や構造部材に用いられる繊維強化プラスチック(FRP)製形状品と熱可塑性樹脂組成物の形状品とからなる樹脂製一体化物とその製造方法の提供。
【解決手段】成形された不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチック製形状品(1)と、前記繊維強化プラスチック形状品の表面に被覆された熱硬化性のコーティング材と、前記コーティング材の上面に射出成形によって成形し一体に固着された熱可塑性樹脂組成物(2)の形状品とからなる。繊維強化プラスチックは、熱硬化性の繊維強化プラスチックであり、熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物であることが好ましい。
【選択図】図1

 特許請求の範囲


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチック製形状品と、
前記繊維強化プラスチック製形状品の表面に被覆された熱硬化性のコーティング材と、
前記コーティング材の上面に射出成形によって成形され一体に固着された熱可塑性樹脂組成物の形状品と
からなることを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物において、
前記繊維強化プラスチック製形状品は、熱硬化性の繊維強化プラスチック製形状品であり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物である
ことを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物。
【請求項3】
請求項2に記載の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物において、
前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、繊維系フィラー及び/又は無機フィラーを10〜50%含んでいるものである
ことを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物において、
前記コーティング材は、活性水素基が含まれている塗料、又はインキである
ことを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物において、
前記コーティング材は、ウレタン硬化型のものである
ことを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物。
【請求項6】
繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法であって、
不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチックを半硬化又は全硬化させるとともに所定の形状に形状化させ、射出成形金型にインサート可能な繊維強化プラスチック製形状品の製作工程と、
前記繊維強化プラスチック製形状品の表面に熱硬化性樹脂組成物を含むコーティング材を塗布し焼き付けする塗布焼付け工程と、
前記焼付け済みコーティング材が焼き付けされた前記繊維強化プラスチック製形状品を前記射出成形金型にインサートし熱可塑性樹脂組成物を射出する射出接合工程とからなる
ことを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法において、
前記繊維強化プラスチックは、熱硬化性の繊維強化プラスチックであり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物である
ことを特徴とする繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法。

 発明の詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器、家電製品、医療機器、車両搭載用品、建築資材、その他の産業機器等部品の製造に用いられる繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物とその製造方法に関する。特に、電子機器の筐体や構造部材に用いられる熱硬化性の繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:以下、FRPという。)製形状品に硬質の熱可塑性樹脂組成物形状品を射出成形した繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FRPは、長繊維型で各種強化繊維の不織布、又は織布を型内に置きそこへ硬化剤と熱硬化性樹脂組成物を混ぜた物を染みこませ、型内で交互に手作業で積み上げていく方法であり、これを重合固化させる(ハンドレイアップ法)方法、短繊維型の各種強化繊維を何らかの方法で予備形状化し、これを型内に置きそこへ硬化剤と熱硬化性樹脂組成物を混ぜた物を押し込み染みこませて重合固化させたもの(プリフォームドマッチドダイ法)、常温や加熱プレス型内で繊維物と熱硬化性樹脂コンパウンドの混ざった物を重合固化させたもの(マッチドダイ法、SMC法、プリプレグ熱プレス法)が用いられている。
【0003】
更には、短繊維型の強化繊維類と熱硬化性樹脂組成物を混ぜて中間材とし、これを射出成形機で加熱した金型内に射出し重合固化して製造する方法(BMC法、射出成形法)等で作ったものがある。又、狭い意味でFRPと言うのは強化繊維がガラス繊維の場合であって、強化繊維に炭素繊維を使ったものはCFRP(Carbon−fiber Reinforced Plastic)、アラミド繊維を使った物はAFRPと呼ぶ言い方もされている。本発明では、ガラス繊維強化のFRPも、CFRPもAFRPも全て纏めてFRPと呼ぶことにする。
【0004】
昨今では、炭素繊維布に熱硬化性樹脂組成物を染み込ませて作った中間材(プレプリグ)を、熱プレス法で板状のCFRP製形状品としたものが非常に軽量で強固なものができるので、モバイル電子機器用ケース形状品(ケースの構造体)等として注目されている。即ち、この超軽量のケース形状品の内側に射出成形等で得られた熱可塑性樹脂製のボス、リブ等構造部位を接合一体化し、更に電子部品がマウントされたプリント配線板をこのボスにネジ止めして使用するのである。
【0005】
ケース形状品に熱可塑性樹脂製内部部品を一体化する技術は、モバイル機器用に限らず多くの機器で用いられている。即ち、ケース形状品がFRP製、ステンレス薄板製、アルミニウム合金板製、マグネシウム合金板製、その他の材料製に限らず、自動車、家庭電化製品、産業機器等の広い製造分野にて必要であり、両者の接合は接着剤や両面テープで行われている。現在、この接合法で十分に用を足しているとみられ、接着性物質を使用しない接合法はあまり開発された形跡はない。
【0006】
一方、本発明者らは金属類に対し接着剤を使用せずに熱可塑性エラストマーを一体化する方法、即ち、金属側に特殊な塗料を塗布して硬化させ、そこへ熱可塑性エラストマー成分を射出することで成形と同時に接合も行う方法を既に開発し開示している(例えば、特許文献1参照)。又、本発明者らはアルミニウム合金類を簡単な液処理をしてから射出成形金型にインサートし、種類は限られるが硬質の熱可塑性樹脂組成物を射出して一体化する方法、即ち、特定処理をしたアルミニウム合金にポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂組成物等を射出接合する方法を既に開発し提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
それ故、熱硬化性樹脂製の形状品を射出成形金型内にインサートしてそこへ硬質の熱可塑性樹脂を射出し、熱可塑性樹脂の成形と接合を同時に行う技術の開発が要望されている。今後、モバイル電子機器が汎用的に使われるようになれば、機器の多様化の要望は更に強まり、金属と硬質の熱可塑性樹脂との一体化物だけでなく、FRPと硬質の熱可塑性樹脂が一体化した複合体とその製造技術の開発も要望されている。
【特許文献1】特開2003−246009号公報
【特許文献2】特開2004−050488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、射出成形金型に被接合物となる形状品をインサートして、そこへ熱可塑性樹脂組成物を射出し、その結果、インサートされた形状品と射出された熱可塑性樹脂組成物が接合(固着)した一体化物を得るという方法を「射出接合」と呼んでいる。もし射出接合によってFRP製部品(FRP製形状品)に硬質の熱可塑性樹脂組成物の形状品の接合が達成できれば、例えば、板状のFRP製機器ケース等の表面上に多数のリブ、ボスが位置決め誤差なく高速で大量接合が可能になり好ましい。
【0009】
樹脂成分に熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステルを使用した炭素繊維布のプリプレグを、熱プレス法によってFRP製部品とし当初に実験を行った。このFRP製部品の表面は硬化した不飽和ポリエステル組成物であり、その樹脂成分は、ビスフェノール系の不飽和ポリエステル組成物であった。このプリプレグを金型形状に合わせて切断し雌型内に数枚重ねて装填し、この雌型に雄型を重ねた後にプレス機にてプレスしメーカー指定の硬化条件の温度より40度低い80℃まで昇温し数分置いて半硬化形状のFRP製部品を得た。
【0010】
得られたFRP製部品は、半硬化状態とみられるが、これを射出成形金型にインサートしABS樹脂を射出した。射出成形金型を開き一体化物を得た。しかしながら、この一体化物は、両者の接合、即ちその固着力はごく弱く各種製品の部品に用いるような実用品には耐えられないものであった。又、そのプリプレグを金型に装填し、プレス機で圧縮した上で120℃まで昇温して硬化温度を上げて熱硬化させた。
【0011】
これを射出成形金型にインサートして、同一のABS樹脂を使用の射出接合の試験をしたが、この場合は両者間に接合力が生じず一体化物は得られなかった。これらの実験から、FRP製部品に直接的に熱可塑性樹脂を射出接合する、即ち、単純に熱融着に近い方法で接合する方法は難しい問題点を有することが分かった。そこでFRP製部品(FPR製形状品)に各種コーティング材を塗布してから各種熱可塑性樹脂を射出接合試験する形で、種々試行錯誤しながら開発を行った。
【0012】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、次の目的を達成する。
本発明の目的は、FRP製形状品(繊維強化プラスチック製形状品)と熱可塑性樹脂組成物の形状品とを射出接合することができる繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成型品の樹脂製一体化物とその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、FRP製形状品と熱可塑性樹脂組成物の形状品とを強力に接合(固着)することができる繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記した課題を解決するために次のような手段をとる。
本発明1の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、
成形された不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチック製形状品と、前記繊維強化プラスチック製形状品の表面に被覆された熱硬化性のコーティング材と、前記コーティング材の上面に射出成形によって成形し一体に固着された熱可塑性樹脂組成物の形状品とからなることを特徴とする。
【0015】
本発明2の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明1において、
前記繊維強化プラスチック製形状品は、熱硬化性の繊維強化プラスチック製形状品であり、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物である
ことを特徴とする。
【0016】
本発明3の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明2において、
前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、繊維系フィラー及び/又は無機フィラーを5〜50%含んでいるものであることを特徴とする。
【0017】
本発明4の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明1から3において、
前記コーティング材は、活性水素基が含まれている塗料、又はインキであることを特徴とする。
【0018】
本発明5の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明1から3において、
前記コーティング材はウレタン硬化型のものであることを特徴とする。
【0019】
本発明6の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法は、
繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法であって、不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチックを半硬化又は全硬化させるとともに所定の形状に形状化させ、射出成形金型にインサート可能な繊維強化プラスチック製形状品の製作工程と、前記繊維強化プラスチック製形状品の表面に熱硬化性樹脂組成物を含むコーティング材を塗布し焼き付けする塗布焼付け工程と、前記焼付け済みコーティング材が焼き付けされた前記繊維強化プラスチック製形状品を前記射出成形金型にインサートし熱可塑性樹脂組成物を射出する射出接合工程とからなることを特徴とする。
【0020】
本発明7の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法は、本発明6において、
前記繊維強化プラスチックは、熱硬化性の繊維強化プラスチックであり、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物であることを特徴とする。
【0021】
以下、使用する材料、加工方法、実施例、その他関連事項について詳細に説明する。
[繊維強化プラスチック製の形状品]
本発明でいう繊維強化プラスチックは広義のFRPを指す。即ち、狭義のガラス繊維強化プラスチックはFRP、炭素繊維強化物はCFRP、アラミド繊維強化物はAFRP等と称されているが、本発明でいうFRPはこれら全てを含むものをいう。また、本発明のFRPには、その他の種類の繊維を使用したものであっても、繊維強化型で熱硬化性のプラスチックを用いたものであれば含まれる。
【0022】
これらFRPの組成は繊維分と熱硬化性樹脂分からなっており、本発明で使用するFRPとしては、樹脂分として不飽和ポリエステル系等が使用できる。SMC(シートモールディングコンパウンド)用の樹脂組成物、プリプレグ用の樹脂組成物、及び、短繊維を混合して得る中間製品(いわゆるBMC)用に使用できる不飽和ポリエステル系樹脂組成物は、多くの化学メーカーがFRP用樹脂として市販している。
【0023】
一方の繊維側であるが、使用されるガラス繊維マット(長繊維のガラス繊維製不織布)、ガラス繊維布(長繊維のガラス繊維製織布)、炭素繊維布(長繊維の炭素繊維製の織布)、アラミド繊維布、各種チョップドファイバー(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等を切断して得た短繊維)なども繊維メーカーから市販されている。加えて、繊維分と樹脂分を既に組み合わせた未硬化FRP材料として、前述したSMC、BMC、プリプレグ等の中間材料があり、これらも市販されている。それ故、FRP製形状品は、BMCやプリプレグ等の中間材料から製造することもできるし、全ての資材を自前で調達し調整して製造することも出来る。要するに、FRP製造業は成熟した化学工業分野である。
【0024】
本発明に於けるFRPの製造は、特別な方法で行う必要がないので、各種材料を市販品から必要なものを調達し、材料メーカーの指示マニュアル通りの方法で形状化、熱硬化させて所望のFRP製形状品を製造することが当業者は可能である。ただ具体的にはFRPとしての硬化条件はメーカー指定の条件よりやや緩めが好ましい。本発明で使用できる形状化方法としてハンドレイアップ法、マッチドダイ法、熱プレス法、射出成形法、その他の方法など色々使用でき、所定の形状に形状化するとの成形方法はどのような方法を採用しても良い。
【0025】
ただし、本発明において用いるFRP製形状品は、後工程で射出成形金型にインサートするので、FRP成形後に切断加工等の機械加工をして、所望の形状、寸法に加工することは可能ではあるが、出来る限り機械加工を少なくする意味で成形精度が高い成形方法を採用するのが好ましい。この意味では、FRPの成形は、マッチドダイ法、熱プレス法、射出成形法等が好ましい。そして、半硬化、又は全硬化して固化したFRPの寸法が目的通りであればそのまま後工程に進めるが、少なくともバリ取り、端部の寸法を揃えるための切断処理、射出成形品では樹脂注入口を切断する切断処理等、機械加工が必要なことが多い。
【0026】
硬化したFRP製形状品を後記するインキや塗料で塗布焼付けし、射出成形金型にインサートして熱硬化樹脂を射出接合するが、射出成形金型温度を最大限に近い高温としてFRP製形状品の最終硬化を行うことも好ましい一体化物成形法として使用できる。この場合、射出成形金型にインサートするインキ等塗布済みFRP製形状品は、前もって行うFRPでの硬化条件を緩和して低い硬化率としておき、高温の射出成形金型で再度熱プレスする形とする。射出成形金型で最終形状に加工されるのでインサートする形状品が半硬化状態であれば完全に射出成形金型のキャビティ形状と一致するものでなくてもよいことになる。
【0027】
[コーティング材と塗布工程]
コーティング材に関して説明する。コーティング材としては熱硬化性、又はその他の硬化性樹脂組成物を含む物が使用できる。特に、化学的な観点から言えば、活性水素基を含む熱硬化性樹脂を基としたコーティング材が好ましい。例えば、ウレタン硬化型のインキや塗料、アルキッド樹脂系塗料、変性アルキッド樹脂系塗料、エポキシアルキッド樹脂系塗料が好ましい。その他の硬化性の樹脂組成物としては、空気によって酸化硬化する油脂添加の変性アルキッド塗料、空気中の湿気で硬化するウレタン系塗料などがあり、これらも使用できる。これら塗料やインキは1液性や2液性のインキや塗料として市販されており、好適に使用できる。
【0028】
本発明の実施にあたって、これらコーティング材を生かすにはもう一つのポイントがあり、これはコーティング材の硬化条件である。本発明者らは、従来に培った経験から、硬化後のコーティング層に活性水素などの活性基が残存していることが重要と考えた。例えば、ウレタン硬化性インキを塗布して硬化させたとして、これらのインキメーカーが提示する硬化条件に拘らず、最適条件を探るために試験して採用するのが好ましい。
【0029】
コーティング材の硬化率が100%近いと残存した活性水素基が少なくなり好ましくない。一方、硬化が不十分でないと生地であるFRP類とインキの接合力(本発明では、「固着力」と同義に用いる。)が弱くなる。ここらの見定めは実験を繰り返して定めるとよい。塗膜上に残存水素基が充分に存在する場合、ここへ熱可塑性樹脂組成物の形状品を射出した時、高温高圧の溶融樹脂と水素基が接触して何らかの反応を生じ、接合力に寄与することになると本発明者らは推測している。
【0030】
多くの実験の結果、コーティング材として接合力が安定して強いとみられたのは2液性のウレタン硬化型のインキや塗料であった。この系統のインキや塗料は多種類が市販されている。本発明者らの実験では、これを販売しているメーカー指示の硬化条件とほぼ同等の条件での結果が好ましいと判断できた。但し、冬季の非常に乾燥した条件で塗布硬化すると硬化が理想的に進み過ぎ、おそらく残存活性水素基が少なくなり、射出接合の結果は大きく悪化した(接合力が弱かった)とみられる。
【0031】
よって冬季対策、特に非常に空気が乾燥しているときは、溶剤に1%程度の水を溶かしたものを予め作成し、これをインキや塗料の希釈用溶剤として使用すればこの問題は解決できる。前記したインキや塗料を用意し、前工程で得たFRP類の必要な箇所に塗布する。塗布した後、熱風乾燥機に入れてインキや塗料を硬化する。塗布する膜厚は10〜30μmと、やや厚めを目標にする。
【0032】
[熱可塑性樹脂組成物]
次に、本発明で使用する熱可塑性樹脂組成物、及び射出接合について説明する。本発明で使用する樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」という。)を、主成分として含む熱可塑性樹脂組成物が好ましい。PBT単独のポリマーだけでなく、PBTとポリカーボネート(以下、「PC」という。)とのポリマーコンパウンド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(以下、「ABS」という。)とのポリマーコンパウンド、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)とのポリマーコンパウンド、ポリスチレン(以下、「PS」という。)とのポリマーコンパウンドも使用できる。
【0033】
又、本発明で使用する樹脂へのフィラーの含有は、FRPと熱可塑性樹脂組成物との線膨張率を一致させるという点から非常に重要である。フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他これらに類する繊維系フィラーが良い。又、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ガラス、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物、その他類する樹脂充填用無機フィラーを含有した熱可塑性樹脂組成物であることがより好ましい。FRP類の線膨張率は、FRP類に含まれる繊維量や繊維長さによって大きく変動するが、それでも2〜4×10−5−1程度とみられ、熱可塑性樹脂側をそれに合わせるために、フィラーの含量をコンパウンド全体の5〜50%に調整することが必要である。
【0034】
[射出接合工程]
塗布焼付け工程を済ませたFRP製形状品を、射出成形金型を開きインサートする。射出成形条件は、射出する熱可塑性樹脂で通常の射出成形を行うときと特に変わらないが、射出成形金型温度はやや高めに設定するのが好ましい。例えば、ノズルの射出温度が260℃の場合、射出成形金型温度が100℃程度であることが好ましい。射出接合時にFRP製形状品の硬化を更に進める目的を持った場合、射出成形金型温度はPBT系樹脂の離型が円滑に行くための最高温度、例えば120℃付近迄の温度に上げることも好ましい。射出した樹脂はFRP製形状品上の塗膜に対して接合する。従って、塗膜は必要箇所のみに塗布されていれば良く、前工程で塗布するFRP製形状品の表面の全面でない。それ故、前工程は塗装ではなく印刷や筆塗りでもよい。
【0035】
インサート成形後のFRP類の冷却縮みと熱可塑性樹脂組成物の成形収縮の関係について述べておく。離型し、FRP側が射出成形金型から出て放冷され縮む長さは、熱可塑性樹脂側の成形収縮より小さいことが多いと予想された。例えばフィラーを30〜40%と大量に含んだPBT系樹脂でも成形収縮率は0.6%程度あり結構大きいからである。しかしFRP類の冷却縮みも金属と同じようにその温度低下と同じタイミングで縮むかは不明である。要するにFRP側も熱可塑性樹脂側も含有繊維量をどう調整したとしても、縮み量と縮み速度を一致させられないのである。従って、接合強度の長期的な変化に影響を与える線膨張率のこととは関係なく射出接合直後から熱可塑性樹脂組成物が落ち着く(成形収縮が終了する)約1日程度の間、接合面付近は内部歪が高くなったり低くなったり変動し、それがある値で残存するものとみられる。この内部歪を解消するには熱可塑性樹脂組成物の軟化点より数十度低い温度に保った熱風乾燥機内に1時間程度一体化物を保持する(アニールする)のが好ましい。PBT系樹脂組成物を射出接合した場合であればアニール温度は140〜150℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
以上詳記したように、本発明の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、FRP製形状品と硬質の熱可塑性樹脂組成物の形状品がコーティング材(塗膜)を介して接合したものであり、FRP製形状品と硬質の熱可塑性樹脂組成物の形状品とが強力に接合し容易に剥がれないものとすることができる。
本発明の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法は、この方法で製造した筐体、部品や構造物の軽量化、部品製造工程の簡素化、高能率化を図ることができ、経済性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態を実施例に代えて説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0038】
SMC用の不飽和ポリエステル樹脂組成物を市販材料から作成した。即ち、不飽和ポリエステル樹脂「N−21B(ジャパンコンポジット社製)」85部、熱可塑性ポリマー液「AT−300(ジャパンコンポジット社製)」15部、充填材として炭酸カルシウム粉末「SL−1000(竹原化学社製)」100部、内部離型材としてステアリン酸亜鉛(堺化学社製)3部、硬化触媒としてt−ブチルパーオキシベンゾエート「パーブチルZ(日本油脂社製)」1部、増粘剤として酸化マグネシウム「キョーワマグ30(協和化学社製)」0.7部から混合作成した。
【0039】
一方、100mm×50mm×10mmのSUS(ステンレス)製の長方形をしたマッチドダイ金型の凹型内に、0.05mm厚ポリエチレンフィルムを敷き、同形状に裁断した炭素繊維正織り織布(三菱レイヨン社製)を1枚置きその上に前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を満たしてヘラで拡げ、更に上から2枚目の炭素繊維織布を敷いて再度前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を満たしてヘラで拡げ、更に3枚目の炭素繊維織布を敷いてヘラで押し付け更に前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を追加して加えた。後述する上側のポリエチレンフィルムも含めた全体厚さとして2.2〜2.3mmとなるようにし、空気を巻き込まないように0.05mm厚のポリエチレンフィルムでカバーし、この上に凹型(金型の下型)に嵌まるように作られている金型の上型を載せた。上型は4.9N(500gw)の重さがある。このままの状態で40℃とした温風乾燥機内に12時間置いてゲル化(半硬化)を進めた。
【0040】
温風乾燥機から金型を取り出し、上型を開き、金型凹型(下型)は側面部を分解して内容物を取り出した。内容物はいわゆるCFRPプリプレグである。これをポリエチレン袋に入れて封口し冷蔵庫に保管した。
3日後、再び100mm×50mm×10mmの先ほどの金型凹型を取り出し、冷蔵庫から取り出してポリエチレンフィルムを剥がしたCFRPプリプレグを金型凹型内に装填した。上型を乗せて加熱できるプレス機に入れてCFRPの厚さが2.0mmになるよう圧縮し、80℃まで昇温させて1分置きプレス機から外した。放冷してから金型から硬化したCFRP製形状品を取り出した。周辺を削り取って100mm×50mm×2mmのCFRP製板材(CFRP製形状品)とした。
【0041】
一方、ウレタン硬化型の2液性インキ「VIC黒(セイコーアドバンス社製)」を購入し、主液:硬化剤:溶剤=100:10:30で配合し、よく混合した。但しメーカーから購入したVIC用溶剤を一旦別容器に取り、溶剤の0.5重量%分の水を加えてよく撹拌し、水を溶剤に溶け込ませた。この含水溶剤を前記のインキ調整に使用した。出来上がった調整済みインキがコーティング材となる。調整済みインキを筆で前記したCFRP製板材の片面に筆塗りし、80℃にセットした熱風乾燥機内に置いて30分放置しインキを焼付けた。
【0042】
一方、PBT61重量%、PET9重量%、ガラス繊維30重量%からなるPBT系の熱可塑性樹脂組成物の樹脂ペレットを作成し130℃とした熱風乾燥機に3時間置いて乾燥した。乾燥したPBT系樹脂組成物を射出成形機に充填した。前記のようにインキ塗布、焼付けしたCFRP製板材を120℃とした射出成形のための射出成形金型にインサートし射出成形金型を閉じて前記したPBT系樹脂組成物を射出温度270℃で射出した。射出成形金型を開き内容物を取り出したところ射出成形によって接合された穴付きボス(PBT系樹脂組成物の形状品)とCFRP製板材(CFRP製形状品)からなる樹脂製一体化物が得られた。
【0043】
この樹脂製一体化物の形状を図1、図2に示す。図1は、CFRP製板材に6個の穴あきボスが射出接合された樹脂製一体化物の平面図、図2は、図1のA−A断面図である。図3は、穴付きボス2に、ネジ4をネジ込んだ状態を示す説明図である。図1、2に示すように、CFRP製板材1に穴付きボス2が射出接合されている。3はピンゲート跡である。この成形の約2時間後、150℃とした熱風乾燥機に樹脂製一体化物を入れて1時間放置しアニールした。
【0044】
一方、呼び径2mmのネジ(例えば、タッピンねじ)4を入手し、図3に示すように、ネジ4を前記樹脂製一体化物の5個の穴付きボス2に順次5本のネジ込んだ。全てほぼ締め込み出来ないレベルまでネジ込み、端部のネジから順に全てのネジを強引に締めたところ、穴付きボス2が途中から破壊した物が1個、ネジ山が壊れた物が1個、穴付きボス2が根元から取れた物3個であった。穴付きボス2が根元から取れた物の破壊面を観察すると、3個ともCFRP製板材1側は炭素繊維が剥き出しになっており、CFRP製板材1の樹脂部分(表層部分)が穴あきボス2(PBT系樹脂組成物の形状品)とともに剥がれたことが分かった。要するに黒インキ層とPBT系樹脂組成物の形状品は強固に接合しており、黒インキ層とCFRP表層の接合も強いことが分かった。
【実施例2】
【0045】
エポキシ・ヒンダードイソシアネート系塗料「B8655(武蔵塗料社製)」を「VIC黒」に代えて使用した他は、実施例1と全く同様に実験を行った。但し、この塗料は1液性であり硬化剤の混合はない。塗布後の焼付けは90℃×1時間とした。
射出接合で得た樹脂製一体化物も実施例1と同様にアニールした。アニールの翌日、5個のボスに同様にヤマシナ社製特殊ネジを何処かが破壊するまでネジ込んだ。今回、全ての穴あきボス2はCFRP製板材1より剥がれた。インキは穴付きボス2側に付着していたが実施例1のようにCFRP製板材1側の表層(表皮)が剥がれるようなことはなかった。実施例2の不飽和ポリエステル樹脂組成物とインキ層の接合力は実施例1より弱いことが分かった。

 図面の簡単な説明

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、CFRP製板材に6個の穴付きボスが射出接合された樹脂製一体化物の平面図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は、穴付きボスに、ネジをネジ込んだ状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1…CFRP製板材(繊維強化プラスチック製形状品)
2…穴付きボス(熱可塑性樹脂組成物の形状品)
3…ピンゲート跡
4…ネジ

 図面

【図1】
【図2】
【図3】