【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、射出成形金型に被接合物となる形状品をインサートして、そこへ熱可塑性樹脂組成物を射出し、その結果、インサートされた形状品と射出された熱可塑性樹脂組成物が接合(固着)した一体化物を得るという方法を「射出接合」と呼んでいる。もし射出接合によってFRP製部品(FRP製形状品)に硬質の熱可塑性樹脂組成物の形状品の接合が達成できれば、例えば、板状のFRP製機器ケース等の表面上に多数のリブ、ボスが位置決め誤差なく高速で大量接合が可能になり好ましい。
【0009】
樹脂成分に熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステルを使用した炭素繊維布のプリプレグを、熱プレス法によってFRP製部品とし当初に実験を行った。このFRP製部品の表面は硬化した不飽和ポリエステル組成物であり、その樹脂成分は、ビスフェノール系の不飽和ポリエステル組成物であった。このプリプレグを金型形状に合わせて切断し雌型内に数枚重ねて装填し、この雌型に雄型を重ねた後にプレス機にてプレスしメーカー指定の硬化条件の温度より40度低い80℃まで昇温し数分置いて半硬化形状のFRP製部品を得た。
【0010】
得られたFRP製部品は、半硬化状態とみられるが、これを射出成形金型にインサートしABS樹脂を射出した。射出成形金型を開き一体化物を得た。しかしながら、この一体化物は、両者の接合、即ちその固着力はごく弱く各種製品の部品に用いるような実用品には耐えられないものであった。又、そのプリプレグを金型に装填し、プレス機で圧縮した上で120℃まで昇温して硬化温度を上げて熱硬化させた。
【0011】
これを射出成形金型にインサートして、同一のABS樹脂を使用の射出接合の試験をしたが、この場合は両者間に接合力が生じず一体化物は得られなかった。これらの実験から、FRP製部品に直接的に熱可塑性樹脂を射出接合する、即ち、単純に熱融着に近い方法で接合する方法は難しい問題点を有することが分かった。そこでFRP製部品(FPR製形状品)に各種コーティング材を塗布してから各種熱可塑性樹脂を射出接合試験する形で、種々試行錯誤しながら開発を行った。
【0012】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、次の目的を達成する。
本発明の目的は、FRP製形状品(繊維強化プラスチック製形状品)と熱可塑性樹脂組成物の形状品とを射出接合することができる繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成型品の樹脂製一体化物とその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、FRP製形状品と熱可塑性樹脂組成物の形状品とを強力に接合(固着)することができる繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記した課題を解決するために次のような手段をとる。
本発明1の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、
成形された不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチック製形状品と、前記繊維強化プラスチック製形状品の表面に被覆された熱硬化性のコーティング材と、前記コーティング材の上面に射出成形によって成形し一体に固着された熱可塑性樹脂組成物の形状品とからなることを特徴とする。
【0015】
本発明2の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明1において、
前記繊維強化プラスチック製形状品は、熱硬化性の繊維強化プラスチック製形状品であり、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物である
ことを特徴とする。
【0016】
本発明3の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明2において、
前記ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、繊維系フィラー及び/又は無機フィラーを5〜50%含んでいるものであることを特徴とする。
【0017】
本発明4の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明1から3において、
前記コーティング材は、活性水素基が含まれている塗料、又はインキであることを特徴とする。
【0018】
本発明5の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物は、本発明1から3において、
前記コーティング材はウレタン硬化型のものであることを特徴とする。
【0019】
本発明6の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法は、
繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法であって、不飽和ポリエステル型の繊維強化プラスチックを半硬化又は全硬化させるとともに所定の形状に形状化させ、射出成形金型にインサート可能な繊維強化プラスチック製形状品の製作工程と、前記繊維強化プラスチック製形状品の表面に熱硬化性樹脂組成物を含むコーティング材を塗布し焼き付けする塗布焼付け工程と、前記焼付け済みコーティング材が焼き付けされた前記繊維強化プラスチック製形状品を前記射出成形金型にインサートし熱可塑性樹脂組成物を射出する射出接合工程とからなることを特徴とする。
【0020】
本発明7の繊維強化プラスチックと熱可塑性樹脂成形品の樹脂製一体化物の製造方法は、本発明6において、
前記繊維強化プラスチックは、熱硬化性の繊維強化プラスチックであり、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物であることを特徴とする。
【0021】
以下、使用する材料、加工方法、実施例、その他関連事項について詳細に説明する。
[繊維強化プラスチック製の形状品]
本発明でいう繊維強化プラスチックは広義のFRPを指す。即ち、狭義のガラス繊維強化プラスチックはFRP、炭素繊維強化物はCFRP、アラミド繊維強化物はAFRP等と称されているが、本発明でいうFRPはこれら全てを含むものをいう。また、本発明のFRPには、その他の種類の繊維を使用したものであっても、繊維強化型で熱硬化性のプラスチックを用いたものであれば含まれる。
【0022】
これらFRPの組成は繊維分と熱硬化性樹脂分からなっており、本発明で使用するFRPとしては、樹脂分として不飽和ポリエステル系等が使用できる。SMC(シートモールディングコンパウンド)用の樹脂組成物、プリプレグ用の樹脂組成物、及び、短繊維を混合して得る中間製品(いわゆるBMC)用に使用できる不飽和ポリエステル系樹脂組成物は、多くの化学メーカーがFRP用樹脂として市販している。
【0023】
一方の繊維側であるが、使用されるガラス繊維マット(長繊維のガラス繊維製不織布)、ガラス繊維布(長繊維のガラス繊維製織布)、炭素繊維布(長繊維の炭素繊維製の織布)、アラミド繊維布、各種チョップドファイバー(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等を切断して得た短繊維)なども繊維メーカーから市販されている。加えて、繊維分と樹脂分を既に組み合わせた未硬化FRP材料として、前述したSMC、BMC、プリプレグ等の中間材料があり、これらも市販されている。それ故、FRP製形状品は、BMCやプリプレグ等の中間材料から製造することもできるし、全ての資材を自前で調達し調整して製造することも出来る。要するに、FRP製造業は成熟した化学工業分野である。
【0024】
本発明に於けるFRPの製造は、特別な方法で行う必要がないので、各種材料を市販品から必要なものを調達し、材料メーカーの指示マニュアル通りの方法で形状化、熱硬化させて所望のFRP製形状品を製造することが当業者は可能である。ただ具体的にはFRPとしての硬化条件はメーカー指定の条件よりやや緩めが好ましい。本発明で使用できる形状化方法としてハンドレイアップ法、マッチドダイ法、熱プレス法、射出成形法、その他の方法など色々使用でき、所定の形状に形状化するとの成形方法はどのような方法を採用しても良い。
【0025】
ただし、本発明において用いるFRP製形状品は、後工程で射出成形金型にインサートするので、FRP成形後に切断加工等の機械加工をして、所望の形状、寸法に加工することは可能ではあるが、出来る限り機械加工を少なくする意味で成形精度が高い成形方法を採用するのが好ましい。この意味では、FRPの成形は、マッチドダイ法、熱プレス法、射出成形法等が好ましい。そして、半硬化、又は全硬化して固化したFRPの寸法が目的通りであればそのまま後工程に進めるが、少なくともバリ取り、端部の寸法を揃えるための切断処理、射出成形品では樹脂注入口を切断する切断処理等、機械加工が必要なことが多い。
【0026】
硬化したFRP製形状品を後記するインキや塗料で塗布焼付けし、射出成形金型にインサートして熱硬化樹脂を射出接合するが、射出成形金型温度を最大限に近い高温としてFRP製形状品の最終硬化を行うことも好ましい一体化物成形法として使用できる。この場合、射出成形金型にインサートするインキ等塗布済みFRP製形状品は、前もって行うFRPでの硬化条件を緩和して低い硬化率としておき、高温の射出成形金型で再度熱プレスする形とする。射出成形金型で最終形状に加工されるのでインサートする形状品が半硬化状態であれば完全に射出成形金型のキャビティ形状と一致するものでなくてもよいことになる。
【0027】
[コーティング材と塗布工程]
コーティング材に関して説明する。コーティング材としては熱硬化性、又はその他の硬化性樹脂組成物を含む物が使用できる。特に、化学的な観点から言えば、活性水素基を含む熱硬化性樹脂を基としたコーティング材が好ましい。例えば、ウレタン硬化型のインキや塗料、アルキッド樹脂系塗料、変性アルキッド樹脂系塗料、エポキシアルキッド樹脂系塗料が好ましい。その他の硬化性の樹脂組成物としては、空気によって酸化硬化する油脂添加の変性アルキッド塗料、空気中の湿気で硬化するウレタン系塗料などがあり、これらも使用できる。これら塗料やインキは1液性や2液性のインキや塗料として市販されており、好適に使用できる。
【0028】
本発明の実施にあたって、これらコーティング材を生かすにはもう一つのポイントがあり、これはコーティング材の硬化条件である。本発明者らは、従来に培った経験から、硬化後のコーティング層に活性水素などの活性基が残存していることが重要と考えた。例えば、ウレタン硬化性インキを塗布して硬化させたとして、これらのインキメーカーが提示する硬化条件に拘らず、最適条件を探るために試験して採用するのが好ましい。
【0029】
コーティング材の硬化率が100%近いと残存した活性水素基が少なくなり好ましくない。一方、硬化が不十分でないと生地であるFRP類とインキの接合力(本発明では、「固着力」と同義に用いる。)が弱くなる。ここらの見定めは実験を繰り返して定めるとよい。塗膜上に残存水素基が充分に存在する場合、ここへ熱可塑性樹脂組成物の形状品を射出した時、高温高圧の溶融樹脂と水素基が接触して何らかの反応を生じ、接合力に寄与することになると本発明者らは推測している。
【0030】
多くの実験の結果、コーティング材として接合力が安定して強いとみられたのは2液性のウレタン硬化型のインキや塗料であった。この系統のインキや塗料は多種類が市販されている。本発明者らの実験では、これを販売しているメーカー指示の硬化条件とほぼ同等の条件での結果が好ましいと判断できた。但し、冬季の非常に乾燥した条件で塗布硬化すると硬化が理想的に進み過ぎ、おそらく残存活性水素基が少なくなり、射出接合の結果は大きく悪化した(接合力が弱かった)とみられる。
【0031】
よって冬季対策、特に非常に空気が乾燥しているときは、溶剤に1%程度の水を溶かしたものを予め作成し、これをインキや塗料の希釈用溶剤として使用すればこの問題は解決できる。前記したインキや塗料を用意し、前工程で得たFRP類の必要な箇所に塗布する。塗布した後、熱風乾燥機に入れてインキや塗料を硬化する。塗布する膜厚は10〜30μmと、やや厚めを目標にする。
【0032】
[熱可塑性樹脂組成物]
次に、本発明で使用する熱可塑性樹脂組成物、及び射出接合について説明する。本発明で使用する樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」という。)を、主成分として含む熱可塑性樹脂組成物が好ましい。PBT単独のポリマーだけでなく、PBTとポリカーボネート(以下、「PC」という。)とのポリマーコンパウンド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(以下、「ABS」という。)とのポリマーコンパウンド、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)とのポリマーコンパウンド、ポリスチレン(以下、「PS」という。)とのポリマーコンパウンドも使用できる。
【0033】
又、本発明で使用する樹脂へのフィラーの含有は、FRPと熱可塑性樹脂組成物との線膨張率を一致させるという点から非常に重要である。フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、その他これらに類する繊維系フィラーが良い。又、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ガラス、タルク、粘土、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物、その他類する樹脂充填用無機フィラーを含有した熱可塑性樹脂組成物であることがより好ましい。FRP類の線膨張率は、FRP類に含まれる繊維量や繊維長さによって大きく変動するが、それでも2〜4×10
−5℃
−1程度とみられ、熱可塑性樹脂側をそれに合わせるために、フィラーの含量をコンパウンド全体の5〜50%に調整することが必要である。
【0034】
[射出接合工程]
塗布焼付け工程を済ませたFRP製形状品を、射出成形金型を開きインサートする。射出成形条件は、射出する熱可塑性樹脂で通常の射出成形を行うときと特に変わらないが、射出成形金型温度はやや高めに設定するのが好ましい。例えば、ノズルの射出温度が260℃の場合、射出成形金型温度が100℃程度であることが好ましい。射出接合時にFRP製形状品の硬化を更に進める目的を持った場合、射出成形金型温度はPBT系樹脂の離型が円滑に行くための最高温度、例えば120℃付近迄の温度に上げることも好ましい。射出した樹脂はFRP製形状品上の塗膜に対して接合する。従って、塗膜は必要箇所のみに塗布されていれば良く、前工程で塗布するFRP製形状品の表面の全面でない。それ故、前工程は塗装ではなく印刷や筆塗りでもよい。
【0035】
インサート成形後のFRP類の冷却縮みと熱可塑性樹脂組成物の成形収縮の関係について述べておく。離型し、FRP側が射出成形金型から出て放冷され縮む長さは、熱可塑性樹脂側の成形収縮より小さいことが多いと予想された。例えばフィラーを30〜40%と大量に含んだPBT系樹脂でも成形収縮率は0.6%程度あり結構大きいからである。しかしFRP類の冷却縮みも金属と同じようにその温度低下と同じタイミングで縮むかは不明である。要するにFRP側も熱可塑性樹脂側も含有繊維量をどう調整したとしても、縮み量と縮み速度を一致させられないのである。従って、接合強度の長期的な変化に影響を与える線膨張率のこととは関係なく射出接合直後から熱可塑性樹脂組成物が落ち着く(成形収縮が終了する)約1日程度の間、接合面付近は内部歪が高くなったり低くなったり変動し、それがある値で残存するものとみられる。この内部歪を解消するには熱可塑性樹脂組成物の軟化点より数十度低い温度に保った熱風乾燥機内に1時間程度一体化物を保持する(アニールする)のが好ましい。PBT系樹脂組成物を射出接合した場合であればアニール温度は140〜150℃であることが好ましい。