【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一液型フッ素樹脂塗料は(I)特定のグラフト共重合体および(II)導電性フィラーが配合されてなり、通常はさらに(III)有機溶剤が配合されている。詳しくは有機溶剤(III)中、グラフト共重合体(I)は溶解され、導電性フィラー(II)は分散されてなるものである。
【0009】
<グラフト共重合体(I)>
本発明の塗料に配合されるグラフト共重合体(I)は、ウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂(A)(以下、単に「成分(A)」ということがある)、ラジカル重合性ポリシロキサン(B)(以下、単に「成分(B)」ということがある)、およびラジカル重合性単量体(C)(以下、単に「成分(C)」ということがある)を共重合してなるものであり、有機溶剤に対する可溶性を有する。
【0010】
・成分(A)
成分(A)はウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を有するフッ素樹脂であり、詳しくは主鎖としての直鎖状フッ素樹脂がウレタン結合を介してラジカル重合性不飽和結合部分を側鎖として有してなるものである。そのような成分(A)は例えば、水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)とを反応させることによって得ることができる。
【0011】
水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)はその構成成分として少なくとも水酸基含有単量体部分とポリフルオロパラフィン部分とを含むものであれば特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含むものであることができ、さらに下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含むことができる。この一般式(3)で表される繰り返し単位を含むことにより、有機溶剤に対する溶解性を向上することができる。
【0012】
【化1】
【0013】
〔式中、R
1及びR
2は、各繰り返し単位毎に独立して、かつ同一でも異なっていてもよく、水素原子;ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基);炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基);あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、xは2以上の整数である〕。なお、xが2以上の整数であるとは、フッ素樹脂(A−1)が上記一般式(1)で表される繰り返し単位を2以上含むという意味である。
【0014】
一般式(1)で表される繰り返し単位の好ましい具体例として、例えば、フルオロビニリデン基(R
1=R
2=H)、クロロトリフルオロエチレン基(R
1=F、R
2=Cl)、ヘキサフルオロプロピレン基(R
1=F、R
2=CF
3)、テトラフルオロエチレン基(R
1=R
2=F)等が挙げられる。
【0015】
【化2】
【0016】
〔式中、R
3は、繰り返し単位毎に独立して、水素原子;ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基)、炭素数6〜8のアリール基(例えば、フェニル基);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基);あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜8のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R
4は、繰り返し単位毎に独立して、OR
5a基、CH
2OR
5b基、及びCOOR
5c基から選択した2価の基、好ましくはOR
5a基またはCH
2OR
5b基の2価の基であり、R
5a、R
5b、及びR
5cは、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はヘキサメチレン基);炭素数6〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロへキシレン基);炭素数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基);及び炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はキシリレン基)から選択した2価の基であり、yは2以上の整数である〕。なお、yが2以上の整数であるとは、フッ素樹脂(A−1)が上記一般式(2)で表される繰り返し単位を2以上含むという意味である。
【0017】
【化3】
【0018】
〔式中、R
6は、各繰り返し単位毎に独立して、水素原子;ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、又は塩素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基);炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基);あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、R
7は、繰り返し単位毎に独立して、OR
8a基又はOCOR
8b基であり、R
8a及びR
8bは、水素原子;ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、又はエチル基);炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基);炭素数6〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基);ハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数1〜10のアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、又はトリクロロメチル基);あるいはハロゲン原子(例えば、フッ素原子又は塩素原子)1個又は複数個で置換された炭素数6〜10のアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であり、zは2以上の整数である〕。なお、zが2以上の整数であるとは、フッ素樹脂(A−1)が上記一般式(3)で表される繰り返し単位を2以上含むという意味である。
【0019】
水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)の水酸基価は、5〜250mgKOH/gであることが好ましく、10〜200mgKOH/gであることがより好ましく、20〜150mgKOH/gであることが更に好ましい。水酸基価が5mgKOH/g未満であると、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の導入量が著しく少なくなるために、反応混合物が濁る傾向がある。一方、水酸基価が250mgKOH/gを越えると後述のラジカル重合性ポリシロキサン(B)(成分(B))との相溶性が悪化し、グラフト共重合が進行しなくなる場合がある。
【0020】
水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は、公知の方法で調製した化合物を用いることができ、あるいは市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ビニルエーテル系フッ素樹脂(ルミフロンLF−100,LF−200,LF−302,LF−400,LF−554,LF−600,LF710F,LF−986N(旭硝子(株)製))、アリルエーテル系フッ素樹脂(セフラルコートPX−40,A690X,A606X,A202B,CF−803(セントラル硝子(株)製))、カルボン酸ビニル/アクリル酸エステル系フッ素樹脂(ザフロンFC−110,FC−220,FC−250,FC−275,FC−310,FC−575,XFC−973(東亞合成(株)製))又はビニルエーテル/カルボン酸ビニル系フッ素樹脂(フルオネート(大日本インキ化学工業(株)製))等を挙げることができる。本発明においては、ビニルエーテル系フッ素樹脂、アリルエーテル系フッ素樹脂が使用されることが好ましい。水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)は、単独で使用するか又は2種類以上を混合して使用することができる。
【0021】
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)は、イソシアネート基とラジカル重合性を有する部分とを含む単量体であれば特に限定されるものではないが、イソシアネート基を有し、それ以外の官能基(例えば、水酸基又はポリシロキサン鎖)を有していないラジカル重合体単量体を用いるのが好ましい。好適なイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)としては、例えば下記一般式(4)で表されるラジカル重合性単量体、あるいは下記一般式(5)で表されるラジカル重合性単量体を用いるのが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
〔式中、R
9は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)であり、R
10は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)であり、mは0または1である〕。
【0024】
一般式(4)で表されるラジカル重合性単量体の好ましい具体例として、例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、イソシアナトメチルビニルケトン等が挙げられる。
【0025】
【化5】
【0026】
〔式中、R
11は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基)、炭素原子数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)であり、R
12は酸素原子、カルボニル基又は炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)、炭素原子数2〜10のアルキリデン基(例えば、イソプロピリデン基)、又は炭素原子数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、又はキシリレン基)、又は炭素原子数3〜10のシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)である〕。
【0027】
一般式(5)で表されるラジカル重合性単量体の好ましい具体例として、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、m−もしくはP−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)としては、一般式(4)で表されるラジカル重合性単量体が好ましく、より好ましくは一般式(4)においてR
9が水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基(特に、メチル基)、R
10は炭素原子数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、又はテトラメチレン基)であり、mが1であるラジカル重合性単量体であり、さらに好ましくは2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートである。
イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)は1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)との反応では、イソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)を、水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)の水酸基1当量あたり、好ましくは0.001モル以上0.1モル未満の量、より好ましくは0.01モル以上0.08モル未満の量で反応させる。このイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)が0.001モル未満であるとグラフト共重合が困難となり、反応混合物が濁り、経時的に二層分離するために好ましくない。また、0.1モル以上であるとグラフト共重合の際にゲル化が起こりやすくなり好ましくない。
【0030】
水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)とイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)との反応は、水酸基とイソシアネート基との反応によってウレタン結合が形成される限りいかなる条件で行われてよく、例えば、無触媒下あるいは触媒存在下、室温〜80℃で行うことができる。
【0031】
成分(A)は、使用される成分(A)〜成分(C)の全量に対して2〜70重量%、好ましくは4〜60重量%の範囲で用いられる。2重量%未満とすると塗膜としたときの耐候性が低下することがあり、70重量%を越えるとグラフト重合時にゲル化を起こすことがある。
【0032】
・成分(B)
成分(B)はラジカル重合性ポリシロキサンであり、詳しくは直鎖状ポリシロキサン鎖の片末端にラジカル重合性不飽和結合部分を有するものである。
そのようなラジカル重合性ポリシロキサン(B)として、下記一般式(6)で示される単量体を用いることができる。
【0033】
【化6】
【0034】
一般式(6)中、R
13は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。また、R
14、R
15、R
16、R
17、及びR
18は互いに同一でも異なっていてもよい。R
14、R
15、R
16、及びR
17はそれぞれ独立してメチル基、又はフェニル基であることが好ましく、R
18はメチル基、ブチル基、又はフェニル基であることが好ましい。また、nは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
【0035】
ラジカル重合性ポリシロキサン(B)として、下記一般式(7)で示される単量体を用いることもできる。
【0036】
【化7】
【0037】
一般式(7)中、R
19は水素原子又は炭素原子数1〜10の炭化水素基、例えば、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、又は炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。また、R
20、R
21、R
22、R
23、及びR
24は互いに同一でも異なっていてもよい。R
20、R
21、R
22、及びR
23はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)であることが好ましく、R
24は炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基)、水素原子、水酸基であることが好ましい。また、pは0〜10の整数であり、好ましくは3である。また、qは2以上の整数であり、好ましくは10以上の整数、より好ましくは30以上の整数である。
【0038】
成分(B)は、公知の方法で調製した化合物を用いるか、あるいは市販品を用いることができる。市販品として、例えば、サイラプレーンFM−0711(数平均分子量1,000(チッソ(株)製))、サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5,000(チッソ(株)製))、サイラプレーンFM−0725(数平均分子量10,000(チッソ(株)製))、X−22−174DX(数平均分子量4,600(信越化学工業(株)製))等を挙げることができる。
【0039】
成分(B)は、前記一般式(6)で表されるラジカル重合性ポリシロキサンを単独で又は2種類以上混合して、あるいは前記一般式(7)で表されるラジカル重合性ポリシロキサンを単独で又は2種類以上混合して使用することができ、更には前記一般式(6)で表されるラジカル重合性ポリシロキサンの1種若しくはそれ以上と前記一般式(7)で表されるラジカル重合性ポリシロキサンの1種若しくはそれ以上とを混合して使用することができる。
【0040】
成分(B)としては、一般式(7)で表される単量体が好ましく、より好ましくは一般式(7)においてR
19が水素原子又はメチル基であり、R
20、R
21、R
22、及びR
23がメチル基またはフェニル基であり、R
24がメチル基、ブチル基又はフェニル基であり、pは3であり、qが30〜40の整数である単量体、またはそれらの混合物である。
【0041】
成分(B)は、使用される成分(A)〜成分(C)の全量に対して4〜40重量%、好ましくは10〜30重量%で用いられる。4重量%未満とすると防汚性または汚染物質の除去性が不十分となることがあり、40重量%を越えると重合後の未反応単量体成分が多くなり、塗膜の軟化や未反応単量体成分のブリード等の好ましくない事態を招くことがある。
【0042】
・成分(C)
成分(C)は成分(A)および成分(B)以外のラジカル重合性単量体であり、ラジカル重合反応条件下において前記成分(A)および成分(B)と二重結合による重合反応以外には反応しない非反応性のラジカル重合性単量体である。すなわち、ラジカル重合性単量体(C)は、その二重結合部分において、ラジカル重合反応条件下で前記成分(A)および成分(B)と二重結合による重合反応によって結合する。
【0043】
そのようなラジカル重合性単量体(C)は、置換基を有しているかあるいは置換基を有していない単量体であり、その置換基は官能基(二重結合を除く)を含むことができる。但し、この官能基(二重結合を除く)は、ラジカル重合反応条件下において前記成分(A)および成分(B)とは反応しないものであることが必要である。このような置換基としては、具体的には、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ラウリル基、又はステアリル基)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、又はキシリル基)、又はアルキル部分の炭素数が1〜10でアリール部分の炭素数が6〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基)〔前記のアルキル基、アリール基及びアラルキル基をまとめて、以下単に「炭化水素基R」と称することがある〕、水酸基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、ヒドロキシフェニル基、又は4−ヒドロキシメチルフェニル基)、ニトリル基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、シアノエチル基)、エーテル基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、メトキシメチル基、エトキシエチル基、又はメトキシメトキシメチル基)、エステル基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、アセトキシメチル基)、第3アミノ基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、ジメチルアミノメチル基、又はジエチルアミノエチル基)、エポキシ基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、グリシジル基、又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基)、アミド基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R、カルボキシル基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、カルボキシメチル基)、尿素基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R、アルコキシシリル基1個又は複数個を有する前記炭化水素基R(例えば、トリメトキシシリルメチル基、又はジメトキシメチルシリルメチル基)等を挙げることができる。
【0044】
一方、前記成分(A)および成分(B)との二重結合によるラジカル重合反応の際に、成分(A)および成分(B)と二重結合による重合反応以外の反応をする可能性がある官能基を含む置換基としては、例えば、酸ハロゲン化物(例えば、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、リン酸塩化物、又はスルホン酸塩化物)、酸無水物(例えば、無水マレイン酸)、イソシアネート化合物等から誘導される基を挙げることができる。ラジカル重合性単量体(C)は、これらの置換基をもつことはできず、前記成分(A)および成分(B)とはラジカル重合反応条件下で反応しない任意の官能基を有することができる。
【0045】
本発明において用いることのできるラジカル重合性単量体(C)の具体例としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、又はビニルトルエン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等の炭化水素基含有(メタ)アクリレート系単量体;これらの(メタ)アクリレート系単量体の水素原子をフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等で置換した(メタ)アクリレート系単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、又は分岐状モノカルボン酸のビニルエステル(ベオバ(シェル化学(株)製))等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等のアクリロニトリル系単量体;エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、又はシクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、又はジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;ビニルピリジン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、4−(N,N−ジメチルアミノ)スチレン、又はN−{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}ピペリジン等の塩基性窒素含有ビニル化合物系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、又は3,4−エポキシビニルシクロヘキサン等のエポキシ基含有ビニル化合物系単量体;(メタ)アクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、マレイン酸、4−ビニル安息香酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、又はモノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の酸性ビニル化合物系単量体;p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、又はこれらのε−カプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸若しくはシトラコン酸のようなα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とε−カプロラクトンとの付加物、又は前記のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、分岐状モノカルボン酸グリシジルエステル(カージュラE(シェル化学(株)製))のようなエポキシ化合物との付加物等の水酸基含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物系単量体;エチレン、又はプロピレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、又はクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン系単量体;その他マレイミド、ビニルスルホン等を挙げることができる。
【0046】
成分(C)としては、前記の単量体を単独で用いても、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明においてラジカル重合性単量体(C)は、成分(A)および成分(B)との共重合性の観点から、前記した炭化水素基含有(メタ)アクリレート系単量体、および水酸基含有ビニル化合物系単量体からなる群から選択される1種類または2種類以上の単量体を用いることが好ましい。さらにグラフト共重合体(I)の水酸基価及びSP値の制御容易性の観点からより好ましくは、少なくとも前記した炭化水素基含有(メタ)アクリレート系単量体を用いる。これらのとき、特に水酸基含有ビニル化合物系単量体は、p−ヒドロキシメチルスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレートからなる群から選択される1種類または2種類以上の単量体を用いることが、成分(A)および成分(B)との共重合性の観点から、さらに好ましい。
【0048】
成分(C)は、使用される成分(A)〜成分(C)の全量に対して15〜94重量%、好ましくは30〜70重量%の範囲で用いられる。15重量%未満では共重合体のガラス転移点の調整が困難となり、94重量%を越えると防汚性または汚染物質の除去性が不十分となる。
【0049】
グラフト共重合体(I)は公知のラジカル重合反応条件下で製造可能である。例えば、上記所定の成分(A)〜(C)を有機溶剤とともに、窒素雰囲気中、室温〜200℃で1〜2時間保持することによって製造可能である。有機溶剤は後で詳述される有機溶剤(III)が使用可能であり、特にエステル系溶剤が好ましい。
【0050】
本発明で使用されるグラフト共重合体(I)は水酸基価が20mgKOH/g以下、特に1〜20mgKOH/g、好ましくは2〜17mgKOH/gである。水酸基価が大きすぎると、PS板への密着性が悪くなる。
【0051】
グラフト共重合体(I)の水酸基価は成分(A)における残余の水酸基の量(成分(A)の水酸基価)、成分(A)の使用量および成分(C)として使用される水酸基含有ビニル単量体の使用量によって制御可能である。
例えば、水酸基を有するフッ素樹脂(A−1)に対するイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体(A−2)の使用割合を増加すると、成分(A)の水酸基価は小さくなり、グラフト共重合体(I)の水酸基価も小さくなる。一方で、上記使用割合を低減すると、グラフト共重合体(I)の水酸基価は大きくなる。
また例えば、成分(A)の使用量および成分(C)として使用される水酸基含有ビニル単量体の使用量を増加すると、グラフト共重合体(I)の水酸基価は大きくなる。一方で、そのような使用量を低減すると、グラフト共重合体(I)の水酸基価は小さくなる。
【0052】
本明細書中、水酸基価はJIS K 0070(1992)(7.1中和滴定法)に基づく値であり、以下の方法によって測定された値を用いている。まず、無水酢酸25mgを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜてアセチル化試薬を調製した。試料約3gを平底フラスコに量り取り、これにアセチル化試薬5mlを加えた。試料が溶解しない場合はなるべく少量のピリジンを追加して溶解させた。フラスコ内の混合物を温度95〜100℃のグリセリン浴中で加熱した。1時間後、フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後、水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解した。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷した。フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定した。試料を入れないこと以外、上記の操作と同様の方法で空試験を行った。空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、試料を用いた滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)および0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクターから試料中の水酸基の量をKOHの「mg数」で求め、これを試料の質量(g)で除して水酸基価を求めた。
【0053】
グラフト共重合体(I)はSP値が8.0〜9.5、好ましくは8.5〜9.2であるものである。SP値が小さすぎると、PSとの密着性が悪くなる。一方で大きすぎても、PSとの密着性が悪くなる。
【0054】
本明細書中、SP値とは溶解度パラメーターを意味し、ここで定義するSP値はR.F.Fedors、Polym.Eng.Sci.,14,(2),147(1974)に記載される計算方法で計算した値である。上記文献により、グラフト共重合体(I)の構成成分各々について構成成分のホモポリマーに対するSP値を算出し、下記式;
SP=(ΣSPi
2・mi)
1/2
(式中、SPiは各構成成分のホモポリマーのSP値、miは各構成成分の重量分率を表す)によりグラフト共重合体(I)のSP値を得る。
【0055】
SP値が上記した範囲となるよう、成分(A)の構成成分、成分(B)、および成分(C)、特に成分(C)の種類およびそれらの使用量を適宜選択して用いれば良い。
【0056】
<導電性フィラー(II)>
導電性フィラー(II)は塗膜に導電性を付与できる物質であれば、特に制限されず、例えば、非酸化金属がドープされた金属酸化物、カーボンナノチューブ等が使用可能である。非酸化金属がドープされた金属酸化物の具体例として、例えば、アンチモンドープ二酸化スズ、アルミドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、酸化インジュウム、アンチモンドープ酸化チタンなどが例示できる。本発明においては導電性フィラーを配合することにより、表面の汚染、特に煙草汚染を有効に防止できる。導電性フィラーが配合されないと、汚染物質が塗膜表面に斑に付着する。導電性フィラーが多い場合、付着した物質が容易に除去できない。
【0057】
上記導電性フィラーの中でも、非酸化金属がドープされた金属酸化物が好ましく、より好ましくはアンチモンドープ二酸化スズ、アルミドープ酸化亜鉛であり、さらに好ましくはアンチモンドープ二酸化スズである。
【0058】
導電性フィラーは塗膜の表面抵抗率が10
7〜10
13Ω/□、好ましくは10
8〜10
12Ω/□、特に10
9〜10
11Ω/□になるような量で配合される。そのような配合量は、導電性フィラーの種類に依存するため一概に規定できないが、通常はグラフト共重合体(I)の固形分重量と当該導電性フィラーの重量との和に対して8〜25重量%が好適である。塗膜の表面抵抗率が大きすぎると、汚染物質が塗膜表面に容易に付着する。一方で、小さすぎると、塗膜表面の汚染物質を拭き取るのが困難になる。
【0059】
例えば、アンチモンドープ二酸化スズを使用する場合、当該導電性フィラーの配合量はグラフト共重合体(I)の固形分重量と当該導電性フィラーの重量との和に対して8〜17重量%がより好ましい。
また例えば、アルミドープ酸化亜鉛を使用する場合、当該導電性フィラーの配合量はグラフト共重合体(I)の固形分重量と当該導電性フィラーの重量との和に対して22〜25重量%がより好ましい。
【0060】
本明細書中、塗膜の表面抵抗率はJIS K 6911−1995に基づく値であり、ハイレスタUP MCP−HT450型(ダイアインスツルメンツ製)によって測定された値を用いている。
【0061】
<有機溶剤(III)>
有機溶剤(III)は塗料の分野で従来より溶媒として使用される有機溶剤が使用可能であり、例えば、エステル系溶剤(例えば酢酸エチル、酢酸イソブチルなど)、ケトン系溶剤(例えばメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなど)、炭化水素系溶剤(例えばトルエン、シクロヘキサンなど)、アルコール系溶剤(例えばメタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロパノールなど)等が挙げられる。
【0062】
塗料中の有機溶剤の配合量は、塗膜の所望厚み等に応じて適宜選択され、通常はグラフト共重合体(I)に対して100〜300重量%、特に200〜300重量%である。
【0063】
<その他>
本発明の塗料には、着色剤をさらに配合してもよい。着色剤を配合することによって、塗膜をカラークリヤー(着色透明膜)とすることができ、塗膜に美粧性を簡便に付与できる。着色剤としては、例えば、パール顔料、着色顔料等が使用可能である。
【0064】
パール顔料の具体例として、例えば、イリオジン110(メルクジャパン(株)製)、マグナパール1000(エンゲルハート社製)等が挙げられる。
着色顔料の具体例として、例えば、ファーストゲンブルー5485、ファーストゲングリーンS(以下大日本インキ化学工業(株))等が挙げられる。
着色剤の配合量は、通常はグラフト共重合体(I)に対して0.2〜3重量%、特に0.3〜2.5重量%が好ましい。
【0065】
<塗料の製造>
本発明の塗料は有機溶剤(III)中にグラフト共重合体(I)および導電性フィラー(II)を配合し、混合することによって容易に製造可能である。混合によってグラフト共重合体(I)は溶解し、導電性フィラー(II)は分散する。混合機は、従来より、塗料やインクの分野で、混合・分散に用いられるサンドミル、ボールミル、高速回転装置、三本ロールなどが用いられる。導電フィラーの分散をより効率的に良くするためには、塗料に、分散助剤(例えばポリエーテルリン酸エステル化合物系、ポリカルボン酸の長鎖アミン塩)を単独で、または組み合わせて配合することができる。
【0066】
塗料中において導電性フィラーが微細均一で分散されることは必ずしも好ましいことではない。特に、繊維状やフレーク状などアスペクト比の大きい導電性フィラー(例えば、FS−10P(石原産業(株)製)、FT−3000(石原産業(株)製))の場合、練りすぎるとフィラーが破損して連結網目構造ができにくくなり、導電性の低下が起こるためである。そのため、導電性フィラーが塗料中で平均粒径0.2〜1.0μm、0.2〜0.5μmで分散されるように混合・分散されることが好ましい。
【0067】
<汚染防止方法>
本発明の汚染防止方法は、上記した一液型フッ素樹脂塗料を塗布・乾燥して塗膜を形成することを特徴とする。
塗料の塗布方法は所定厚みの塗膜を形成できる限り特に制限されず、例えばエアースプレー塗装法、エアレススプレー塗装法、静電塗装法、ローラー塗装法、ハケ塗装法などの従来の塗料の塗布方法が採用できる。導電性フィラー同士の接触による連結網目構造を有する塗膜を形成する観点から、エアースプレーを採用することが好ましい。
【0068】
本発明において塗膜の厚み(乾燥後)は、本発明の目的が達成される限り特に制限されないが15μm以下、特に0.1〜15μmが好ましい。
【0069】
塗膜の乾燥は、常温下での自然乾燥によって達成できるが、塗装品の生産効率上、加熱によって乾燥さることが望ましい。加熱は例えば、40〜60℃で10〜30分の範囲で行う。
【0070】
本発明において塗膜を有効に形成可能な材料として、例えば、PS(ポリスチレン)及びABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)等のプラスチックが挙げられる。これらのプラスチックの中でも、特にPSが好ましい。
【0071】
以上のような方法で形成された塗膜は前記した表面抵抗率を有しながらも、70以上の光沢(60°鏡面光沢度計)、85%以上の全光線透過率を有する。
また塗膜は、それ自体が優れた耐候性および耐薬品性を有することに加えて、プラスチック材、特にPS材及びABS材への密着性に優れ、かつ煙草の煙などの汚染粒子物質の付着防止特性と汚れ拭き取り性の良好な低汚染性を有するという特徴を有する。本発明の塗料は、このような優れた特性を生かして、煙草の煙などに汚れ易いプラスチック製電気製品の汚れを防ぐための防汚塗膜を形成するために好適である。また本発明の塗料によって形成された塗膜は透明性に優れ、下地の意匠性を損なうことがないので、本発明の塗料はクリヤー塗料として提供され得る。本発明の塗料に必要に応じてパール顔料や着色顔料を少量配合することによってカラークリヤーを得ることも出来る。また必要に応じて屋外で使用することも出来る。
【実施例】
【0072】
実施例において「部」は「重量部」を意味するものとする。
実施例において用いた材料の市販品名を示す。
成分(A−1);
セフラルコートA690X(固形分の水酸基価60、不揮発分55%(セントラル硝子(株)製))
ルミフロンLF710F(固形分の水酸基価50、不揮発分100%(旭硝子(株)製))
成分(B);
サイラプレーンFM−0721(チッソ(株)製)
開始剤;
パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製))
導電性フィラー;
アンチモンドープ二酸化スズ(FS−10P(石原産業(株)製))
アルミドープ酸化亜鉛(パセットCK(ハクスイテック(株)製))
【0073】
(製造例1)<成分(A);ラジカル重合性フッ素樹脂A
1の合成>
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー、及び乾燥窒素導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートA690X(181部(固形分換算99.6部))、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(0.4部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ラジカル重合性フッ素樹脂A
1(固形分の水酸基価58、不揮発分55.1%)を得た。
【0074】
(製造例2)<成分(A);ラジカル重合性フッ素樹脂A
2の合成>
前記製造例1に記載のセフラルコートA690Xに代えて、ルミフロンLF710F(99.6部)及び溶剤としての酢酸ブチル81.4部を用いる他は製造例1と同様にして、ラジカル重合性フッ素樹脂A
2(固形分の水酸基価48、不揮発分55.1%)を得た。
【0075】
(実施例1)<導電性一液型フッ素樹脂塗料の調製>
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー、及び乾燥窒素導入口を備えたガラス製反応器に、製造例1で合成したラジカル重合性フッ素樹脂A
1(45部(固形分換算24.8部))、t−ブチルメタクリレート(60部)、2−エチルヘキシルアクリレート(10部)、サイラプレーンFM−0721(5部)、パーブチルO(5部)、酢酸ブチル(80部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で8時間保持することによって、不揮発分が50%で、水酸基価が14KOHmg/g、Sp値が8.8であるグラフト共重合体溶液を得た。
得られたグラフト共重合体溶液にアンチモンドープ二酸化スズ(4.5部)を添加し、混合・分散して塗料を得た。
【0076】
(他の実施例および比較例)<導電性一液型フッ素樹脂塗料の調製>
ラジカル重合性フッ素樹脂、溶剤、ラジカル重合性単量体およびラジカル重合性ポリシロキサンの仕込量及び種類を表1〜表4に記載のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、グラフト共重合体溶液を得た。
導電性フィラーの仕込量および種類を表1〜表4に記載のように変更したこと、および所望により着色剤を表1〜表4に記載のように配合したこと以外は実施例1と同様にして塗料を得た。
【0077】
(評価)
上記塗料をPS板の表面に吹付け塗付し、温度60℃で20分間加熱して乾燥させ、厚み10μmの塗膜を形成し、以下の項目について評価した。なお、密着性試験については、ABS板を用いたこと以外、上記と同様の方法で形成した塗膜についても評価した。
比較例8においては未塗装ポリスチレンサンプル板について評価した。
塗膜厚は電磁式デジタル膜厚計((株)サンコウ電子研究所)によって測定した任意の5箇所の測定値を平均した値である。
方法:被塗物(PS板)と磨き軟鋼板を並べて、同条件で塗装し、磨き軟鋼板の膜厚を膜厚計にて測定。
【0078】
・密着性試験
JIS K 5600−5−6(碁盤目テープ剥離試験:すきま間隔1mm)に準じて密着性(付着性)を評価した。分類0〜5は同JIS規格に基づく評価結果であり、分類0は密着性に優れ、分類1は実用上問題のない範囲内であり、分類2〜5は実用上問題がある範囲である。
【0079】
・表面抵抗率(Ω/□)
ハイレスタUP MCP−HT450型(ダイアインスツルメンツ製)を使用し測定した。
・光沢
JIS K 5600−4−7に準じ60°鏡面光沢度計を用いて測定した。
・全光線透過率
濁度計ヘイズメーターNDH−2000型(日本電色工業製)を使用し測定した。
【0080】
・初期タバコ汚れ性
サンプル板を所定のホルダーにセットし、容積30リットルBOXに入れ、タバコ1本分の煙を封入し、BOX内のファンを1分間運転し煙を均一に撹拌する。2時間放置してサンプルを取りだし、JIS K 5600−4−6に準じ、色差を測定し次の基準で判定した。
色差(△E*)
○;4.0未満;極薄く褐色化する程度であり、汚染物質の付着防止性に優れている;
△;4.0以上6.0未満;薄褐色化する程度であり、実用上問題のない範囲内である;
×;6.0以上;褐色化し、実用上問題がある。
【0081】
・拭き取り性
初期タバコ汚れ性で処理したサンプルを1週間23℃、50%の条件で放置し、ガーゼにマジックリン(花王製)を付けて10往復させて拭き取り後、JIS K 5600−4−6に準じ色差を測定し次の基準で判定した。
色差(△E*)
○;0.3未満;簡単に拭き取れ、元に戻り、拭き取り性に優れている;
△;0.3以上0.7未満;僅かに褐色化が残るが、実用上問題のない範囲内である;
×;0.7以上;褐色化が明らかに残り、拭き取れない。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
表1〜表4において以下を参照のこと。
1)製造例1及び2で合成したフッ素樹脂(溶剤を含んだ量);
2)サイラプレーンFM−0721;
3)メチルメタクリレート;
4)t−ブチルメタクリレート;
5)2−エチルヘキシルアクリレート;
6)2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
7)メタクリル酸;
8)塗料に含有されるグラフト共重合体の固形分重量と導電性フィラーの重量との和に占める導電性フィラーの重量割合;
9)グラフト共重合体の物性値;
「−」添加しなかった、または測定しなかった。
【0087】
SP値について前記文献の計算方法より、ポリメチルメタクリレートは9.48、ポリ(t−ブチルメタクリレート)は8.81、2−エチルヘキシルアクリレートは9.02、2−ヒドロキシエチルメタクリレートは11.96、サイラプレーンFM−0721は6.91、メタクリル酸は11.76、ラジカル重合性フッ素樹脂A
1及びA
2について9.1となる。