【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の弾性ベルト用表面層部材は、2種以上の離型性バインダーと、2種以上の離型性フィラーと、を含有することを特徴とする。
ここで、離型性バインダーとは、弾性ベルトの表面層に用いた場合、離型性及びその維持性を高めることができるバインダーをいう。
【0016】
本発明の弾性ベルト用表面層部材は、2種以上のバインダーと2種以上のフィラーとを添加することにより、弾性ベルトの表面層に用いた場合、離型性及びその維持性を高めることができる。これにより、フィラー及び/又はバインダーが1種の場合に比べて、少ない添加量で初期の離型性を保持することがてき、かつこれ以外の耐摩耗性や摩擦係数などの制御も可能となる。したがって、本発明の弾性ベルト用表面層部材を後述する基材弾性層上に均一に塗工させ表面層を形成した場合、フィラーの脱離による離型性の低下を2種以上のバインダーで抑え、磨耗時のベルトクリーニング性低下を起さない程度の混合量にすることが出来る。
【0017】
本発明における2種以上の離型性バインダーは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン(フッ素、シリコーン等で変性されていてもよい)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、及びフロオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体(例えば旭硝子製:ルミフロン)からなる群から選択される2種以上のバインダーであることが好ましい。
【0018】
更に、本発明における2種以上の離型性バインダーは、相溶性の優れる熱可塑性の離型性バインダーを用いることが好ましく、下記(1)又は(2)の要件を満たすことがより好ましい。
(1)全て熱可塑性の離型性バインダーである。
(2)1種又は2種以上の熱可塑性の離型性バインダーと、1種又は2種以上の熱硬化性の離型性バインダーとからなり、前記1種又は2種以上の熱可塑性の離型性バインダーと、前記1種又は2種以上の熱硬化性の離型性バインダーとの比率が、質量比で、95:5〜5:95(好ましくは90:10〜10:90)の範囲内である。
上述のように、熱可塑性の離型性バインダーを用いることにより、ソフト化された弾性ベルト用表面層部材となり、基材弾性層の温度変化や伸張に対する追従性を克服し表面クラックの発生を抑えることができる。
【0019】
前記熱可塑性の離型性バインダーとしては、ポリエステル樹脂、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、及びフロオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体等が挙げられ、この中でもエチレンテトラフルオロエチレン共重合体、フロオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体が好ましい。
【0020】
本発明における2種以上の離型性バインダーは、上述の離型性バインダーの2種以上を、メラミン、イソシアネート、カルボジアミド等の硬化材を用いて混合して用いることが好ましく、前記2種以上の離型性バインダーが2種の場合、2種の離型性バインダーの含有比率は、質量比で、95:5〜5:95であることが好ましく、80:20〜20:80であることより好ましい。
また、前記2種以上の離型性バインダーは、相溶性のある溶剤で共通混合分散されて、混合されていることが好ましい。
【0021】
本発明において、離型性フィラーとは、弾性ベルトの表面層に用いた場合、離型性及びその維持性を高めることができるフィラーをいう。
前記2種以上の離型性フィラーとしては、フッソ樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びこれらを表面処理または凹凸処理したもの;2硫化モリブデン、シリカ、窒化ホウ素,フッ化カルシウム,フッ化カーボン類、ポリアミド,酸化鉛などの微粒子;グラファイト、各種カーボンブラック、黒鉛などの黒色顔料;ベンガラ等のつやけし顔料からなる群から選択される2種以上の離型性フィラーを用いることが好ましく、これらの中でもPTFE、2硫化モリブデン、ポリアミド、シリカ、カーボンブラックからなる群から選択される2種以上を用いることがより好ましい。
【0022】
前記2種以上の離型性フィラーの添加量は、前記2種以上のバインダー100質量部に対して、1〜500質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがより好ましい。前記2種以上の離型性フィラーの添加量が1〜500質量部であると、表面層の離型性が向上し用紙紙粉の吸着・凝集などのデイフェクトの発生などの不具合を抑制しやすくなり好ましい。
また、前記離型性フィラーが2種である場合、2種の離型性フィラーの比率は、質量比で、95:5〜5:95の範囲内であることが好ましい。前記2種の離型性フィラーの比率が95:5〜5:95の範囲内であると、表面性がより向上する。
【0023】
本発明の弾性ベルト用表面層部材において、好ましい前記2種以上のバインダーと前記2種以上の離型性フィラーとの組み合わせとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、及びフロオロエチレン−ビニルエーテル交互共重合体から2種以上と、PTFE、2硫化モリブデン、ポリアミド、シリカ、カーボンブラックからなる群から選択される2種以上とを組合わせた場合が好ましい。
【0024】
本発明の弾性ベルト用表面層部材は、電気抵抗率を調整するために、更に導電材を含有していることが好ましい。該導電材としては、カーボン粉末、無機酸化物(例えば、酸化錫、酸化チタン、ITO、等の金属酸化物が挙げられる。)が好ましく挙げられる。
尚、本発明の弾性ベルト用表面層部材において、カーボン粉末は、離型性フィラーと導電材の2つの働きをする。
【0025】
本発明の弾性ベルト用表面層部材は、DC500V印加したときの体積固有抵抗率の常用対数値が、6〜13[logΩcm]の範囲内であることが好ましい。前記体積固有抵抗率の常用対数値を6〜13[logΩcm]にすることにより、本発明の弾性ベルト用表面層部材を用いた弾性ベルトは、プレニップ部での過剰放電現象を抑えられ、オゾン劣化や放電現象を抑制され磨耗劣化も少なくなり、ベルト長寿命化に繋がる。また、吸湿性のある弾性部材成分やオイルや加硫時の残留物の移行も撥水性の優れるバインダーや低吸湿性のフィラー配合でブリードブロック性の優れた表面層となる。
更に、後述するように、本発明の弾性ベルト用表面層部材と基材弾性層とのDC500V印加したときの体積固有抵抗率の常用対数値の差は、±1.5[logΩcm]以内であることが好ましい。
【0026】
尚、本発明において、体積固有抵抗率は、アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計により三菱油化HRブローブを用いて、測定環境:23℃55%、印加電圧500v,10秒値で電気抵抗値を測定することにより求めた。
【0027】
本発明の弾性ベルト用表面層部材の塗布液は、溶媒中に、表面層を構成する2種以上の離型性バインダーと、2種以上の離型性フィラー材料を溶解または分散し、必要に応じて抵抗調整用の導電材を混ぜることにより調整され、前記弾性ベルト用表面層部材用塗布液を基材弾性層に塗布することにより、後述の弾性ベルトが得られる。
【0028】
本発明の弾性ベルト用表面層部材は、溶融性のフッ素ポリマー粉末を焼成時に加熱溶融させることにより、本発明の弾性ベルト用表面層部材を用いて弾性ベルトの表面層を設け、基材弾性層において接着性の優れるバインダーを用いた場合には、表面離型性を向上させるためのフィラー配合を出来るだけ抑えることもできる。
【0029】
また、本発明の弾性ベルト用表面層部材は、吸湿性のある基材弾性層の成分やオイル、加硫時の残留物の移行に対して撥水性の優れるバインダーと、低吸湿性のフィラーとを用いることにより、ブリードブロック性の優れた表面層ができる。
【0030】
本発明の弾性ベルトは、図1に示すように、基材弾性層2及び表面層4を有し、更に他の層が設けられていてもよい。図1は本発明の弾性ベルトの層構成の1例を説明するための模式図である。
先ず、基材弾性層2から説明する。
基材弾性層2に用いられるゴム材料としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、ポリノルボルネンゴム、エチレンープロピレンージエン共重合ゴム(EPDM),クロロプレンゴム(CR)、フッソゴム(FKM)、シリコーンゴム、エピクリロロヒドリンゴム(ECO)、多硫化ゴム、ウレタンゴム(UR),アクリロニトリルーブタジエンゴムの水素化物(H−NBR)、スチレンブタジエン共重合ゴムの水素化物(H−SBR)、ブチルゴム(IIR)及びこれらの混合物等が挙げられ、この中でも可撓性が良好である点でCRが好ましい。また、CRの結晶性は抵抗値の変化の度合いに影響するから、CRとして結晶化がなるべく遅いものを用いることが好ましい。また、メルカプタン変性、キサントゲン変性、硫黄変性等の変性CRを用いてもよい。
【0031】
また、基材弾性層2に用いられるゴム材料としては、CRとEPDMとの混合物も好ましく用いられる。前記CRとEPDMとの混合比は、質量比率で、95:5〜5:95であることが好ましく、90:10〜10:90であることがより好ましく、80:20〜20:80であることが更に好ましい。前記CRとEPDMとの混合比が、95:5〜5:95であると、好ましい耐オゾン性や耐久性を示す。
【0032】
基材弾性層2は、更に導電材を含有していることが好ましい。本発明に使用される導電材としては、カーボン粉末及び/又は酸化錫や酸化亜鉛などの導電性金属酸化物、イオン導電材が挙げられる。本発明においては、カーボン粉末、イオン導電材が好ましく用いられる。本発明における基材弾性層に用いられる使用するカーボン粉末としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられ、粒径60nm以下でDBP吸油量が180ml/100g以下であることが好ましい。
【0033】
一方、本発明における基材弾性層に用いられるイオン導電材としては、例えば、含過塩素酸リチウムのエステル系可塑剤のような金属塩含有可塑剤;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体、またはそれらの塩;オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられ、この中でも第4級アンモニウム塩が好ましく、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドのような1分子中に少なくとも1個のフェニル基を含んでいる第4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0034】
基材弾性層2にカーボン粉末を添加する場合には、前記ゴム材料100質量部に対して、1〜80質量部のカーボン粉末を添加することが好ましい。
また、基材弾性層2にイオン導電材を添加する場合には、前記ゴム材料100質量部に対して、0.1〜5質量部のイオン導電材を添加することが好ましい。
更に、カーボン粉末とイオン導電材とを併用する場合には、カーボン粉末:イオン導電材の質量比率が1:50〜1000:1であることが好ましく、10:1〜50:1であることがより好ましい。この場合、組成物の抵抗値調整は主としてカーボン粉末の添加量で行い、イオン導電材は微調整のために添加する。
【0035】
基材弾性層2の体積固有抵抗率は、500V印加時の常用体数値で6〜13[logΩcm]であることが好ましく、該組成物の体積固有抵抗率は、常用体数値で100V印加時と1000V印加時とではその差が3以下であることが好ましい。
基材弾性層2は、更に熱可塑性樹脂を含有してもよく、熱可塑性樹脂を含有する場合には、前記ゴム混合物100質量部に対して該熱可塑性樹脂を1〜100質量部添加される。
【0036】
本発明の弾性ベルトは、表面層4の体積固有抵抗率の常用対数値をR0[logΩcm]、基材弾性層2の体積固有抵抗率の常用対数値をR1[logΩcm]としたときに、R0とR1との差は、
−1.5<(R1−R0)<1.5の関係を満たすことが好ましく、
−1.5<(R1−R0)<1.0の関係を満たすことがより好ましく、
−1.5<(R1−R0)<0.7の関係を満たすことが更に好ましい。
−1.5<(R1−R0)<1.5の関係を満たすことにより、実使用において、用紙以外でのピンホールリーク耐性や画質上での表面抵抗変化による像乱れ、トナーのリトランスファーによる転写効率の低下、用紙静電吸着性低下による用紙ズレ、剥離性の低下、及びトナー、用紙紙粉の吸着・凝集などのデイフェクトの発生などの不具合を抑制できる。
【0037】
また、基材弾性層2は、難燃性、耐熱性、機械的強度等を組成物に付与するために、無機充填材を更に配合することが好ましい。該無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等が好ましい。
【0038】
更に、前記無機充填材の表面がシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。前記無機充填材の表面をシランカップリング剤で処理しておけば、無機充填材はゴムとの親和性が向上し、より均一に混合し易くなる。
【0039】
一方、基材弾性層2に、前記無機充填材を更に配合する場合、前記ゴム組成物100質量部に対する前記無機充填材の配合量が、1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、1〜100質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
また、前記無機充填材が金属水酸化物の場合には、更に難燃性が付与される。
本発明におけるゴム組成物は、難燃度がV−2以上であることが好ましい。
ここで、難燃度とは、米国のUNDERWRITERS LABORATORIES INC.社が制定、認可している電気機器に関する安全性の規格であり、UL燃焼試験法による垂直燃焼試験により規定された規格である。難燃性の程度によりV−0、V−1、V−2がありV−0に近づくほど高難燃性材料であることを示している。燃焼時間が10秒以下から30秒以下で燃焼しながら落ちる溶融物がない場合でV−0〜V−1レベルであり、燃焼しながら落下する溶融物のある場合はV−2である。
【0041】
本発明における基材弾性層は、更に加硫剤を添加することが好ましい。該加硫剤としては、ハイドロタルサイドと酸化亜鉛及び/又は酸化マグネシウムとの二成分または三成分系、酸化亜鉛及び/又は酸化マグネシウムと硫黄との二成分または三成分系が挙げられ、ゴム混合物100質量部に対する加硫剤の添加量は、ハイドロタルサイド、酸化亜鉛、酸化マグネシウムは、それぞれ1〜10質量部であることが好ましく、3〜7質量部であることがより好ましい。一方、硫黄は、0.5〜5質量部であることが好ましい。
また、加硫促進剤をゴム混合物100質量部に対して5質量部以下の量で添加することが好ましい。
【0042】
基材弾性層2には、更に、離型性と分散性を制御する目的で、界面活性剤を添加することが好ましい。該界面活性剤としては、パーフルオロ基を有するアニオンタイプ、両性タイプ、カチオンタイプ,非イオンタイプのオリゴマーの何れでもよく、具体的には、アニオンタイプ(例えば高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンやα−オレフィンのスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等)、カチオンタイプ(例えば第四級アンモニウム塩等)、両性系(例えば、高級アルキルアミンから誘導されるアミノ酸およびベタイン型化合物等)、非イオンタイプ(例えば、ポリエチレングリコールのアルキルもしくはフェニルエーテルまたは脂肪酸とのエステル、グリセリンもしくはソルビタン等の多価アルコール脂肪酸とのエステル等)が好適に挙げられる。
【0043】
本発明においては、基材弾性層2が界面活性剤を含有することによりフィラーの分散性や表面付近に偏在することによりその凝集性や表面離型性、潤滑性などをさらに上げる方向で調整できる。またトナーの帯電性によって帯電性の異なる界面活性材による静電的付着を抑え、フィルミング等の現象を抑制可能になる。基材弾性層2における界面活性剤の含有量は、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.005〜5質量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明の弾性ベルトは、アスカC硬度(高分子計器社製アスカーC硬度計にて、荷重1Kg、測定温度23℃、にて測定した。)が30度〜80度の範囲内に、マイクロ硬度(高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1型を用いて23℃の条件下において測定した。)が40〜60度の範囲内にあることが好ましい。
また、本発明の弾性ベルトは、厚みが0.2〜2.0mm、周長100〜500mm、幅200〜400mmであることが好ましい。一方、表面層は、厚みが3〜50μmであることが好ましく、5〜20μmmであることがより好ましい。
【0045】
基材弾性層2の成形では、先ず所望の量のゴム組成物等を混合する。混合する方法は、特に限定されるものではないが、2本または3本ロール、加圧ニーダー、及び大スケール用ではバンバリミキサーを用いたゴム混練する方法があり、各種充填材やフィラーなどをゴムと合わせてニーダーやバンバリミキサーで予備混練しておき、成形使用時に添加材・加硫剤等の配合薬品をロールにより混合する方法が好ましく挙げられる。
【0046】
前記ゴム組成物等を混合したものから、基材弾性層2を成形する方法は、特に限定されず、例えば、射出成形、鋳型成形等によってベルト形状に成形する方法が挙げられる。この場合成形温度は120〜180℃に設定され、成形と同時に加硫が行われることが好ましい。
【0047】
表面層4は、例えば、前記弾性ベルト用表面層部材の塗布液をデップコート、スプレーコート、フローコート、静電コート、ブレードコート、ローラコート等により基材弾性層2に塗布することにより形成される。前記塗布の方法としては、デップコート、スプレーコート、フローコートが好ましい。
【0048】
前記弾性ベルト用表面層部材の塗布液の基材弾性層2への塗布は、基材弾性層2のSP値に近い溶剤を用いると、膨潤性が高く、かつ高沸点の溶剤では残留しやすくなる場合があり、基材弾性層の表面性が、弾性ベルト用表面層部材の塗布液が塗布された後もそのままでやすく、研磨パターンのムラや表面のうねり、たわみ、波打ちによるクリーニング性低下が発生しやすくなる場合がある。基材弾性層2のSP値より1.0以上離れた溶剤を用いて塗布することが好ましい。これにより十分濡れ性と表面性を維持された表面層を提供できる。例えば、CRの場合にはSP値=8.85であり、溶剤選択にあたってはアセトン(SP値=9.8)アセトフェノン(SP値=10.3)などのケトン系やアルコール系などの溶解可能な樹脂が溶剤として好ましく用いられる。また、EPDM(SP値=7.95)のような無極性ゴムとのブレンドにより、吸油性も変化し、撥水性もまた得られることからトルエン(SP値=8.9)やMIBK(SP値=8.4)などをブレンドして使用してもよい。
以上のように、弾性ベルト用表面層部材の塗布液を基材弾性層へ塗布することにより、弾性ベルトが得られる。
【0049】
本発明の画像形成装置は、上述の本発明の弾性ベルトを備えてなる画像形成装置である。本発明の画像形成装置は、本発明の弾性ベルトを転写搬送ベルト又は中間転写ベルトとして用いることが好ましく、転写搬送ベルトとして用いることがより好ましい。
以下に、本発明の弾性ベルトを備えてなる画像形成装置の1実施形態を図2を用いて説明する。図2は本発明の画像形成装置の1実施形態を説明するための概略構成図である。
図2において、符号10は感光ドラム(像担持体)であり、矢印A方向に回転するようになっている。そして、この感光ドラム10の周囲には、そのドラム表面(感光層)を一様に帯電する帯電器11、帯電された感光ドラム10に所定の画像情報に応じた光学像を露光して静電潜像を形成する像露光装置12、感光ドラム10の表面に現像剤を供給して静電潜像を現像してトナー像とする現像装置13、トナー像Tを記録用紙(最終記録媒体)Pに転写させるベルト方式の転写装置18、転写後の感光ドラム10に残留付着するトナー等を除去するクリーニング装置14等が配設されている。
【0050】
また、符号15は記録用紙Pを積層して収容する給紙トレイ、15aは給紙トレイ15から記録用紙Pを1枚ずつ送り出すフィードロール、16は給紙トレイ15から送り出された記録用紙Pを感光ドラム10と転写装置18の間に所定のタイミングで送り出すレジストロール、17は転写されたトナー像を記録用紙Pに定着させるロール方式の定着装置を示している。
【0051】
本実施形態において、転写装置18は、ベルト形状の本発明の導電性部材からなる転写搬送ベルト(無端ベルト、最終転写媒体搬送ベルト)20と、この転写搬送ベルト20を張架した状態で感光ドラム10と同期して矢印B方向に回転走行するように支持する支持ロール21,22と、転写搬送ベルト20に転写トナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写バイアスを供給するバイアス電源(転写手段)23と、このバイアス電源23から出力される転写バイアスを転写搬送ベルト20に印加する給電ロール(転写手段)24と、転写搬送ベルト20に付着するトナー等を除去するクリーニングブレード25とでその主要部が構成されている。
【0052】
転写搬送ベルト20は、2本の支持ロール21,22により張架された状態で感光ドラム10に当接して転写ニップ部(転写部分)Nを形成するように配設されている。少なくとも転写ニップ部Nの上流側の支持ロール21は接地された状態で配設されており、また2本の支持ロールのうちいずれか一方の支持ロールは転写搬送ベルト20の駆動ロールになっている。(本実例では支持ロール21)は転写搬送ベルト20の駆動ロールになっている。
【0053】
また、給電ロール24は、感光体ドラム1と当接する面を支持する二本の支持ロール20,21間に、転写搬送ベルト20の裏面側に当接するように配設されている。バイアス電源23は、矩形パルスから構成されるバイアス波形からなる転写バイアスを出力するようになっている。
【0054】
更に、感光体ドラム1を駆動する駆動元となるモータ30および転写搬送ベルト20の支持ロールで且つ転写搬送ベルト20の回転を行うドライブロールを駆動する駆動元となるモータ(ベルト駆動手段)31が装備されている。モータ30、モータ31は内部にエンコーダ等の回転状態を出力できる構造を備え、その出力は随時駆動コントローラ70に送られる。駆動コントローラ(回転駆動制御手段)70は、モータ30、モータ31から送られてくる回転状態をモニターし更に、二つのモータの回転速度を比較する比較回路を備え、その比較した値をもとにモータ30、モータ31の回転を制御している。
【0055】
一方、給電ロール24にバイアスを印加するバイアス電源23は、バイアス電源の制御部であるコントローラ(電界判断手段)19によって制御されている。給電ローラ24にはコントローラ19による制御によって、適確なタイミングで適正なバイアス値が印加される。給電ロール24に印加された電圧値はコントローラ19でモニターされ、その情報(転写電界)は前述の駆動コントローラ70に送られることとなる。
【0056】
次に本発明の画像形成装置の1実施形態における画像形成プロセスについて説明する。
先ず、回転する感光ドラム10の感光層を帯電器11により一様に帯電し、その帯電面に像露光装置12により原稿からの反射光を収束した光学像もしくは画像変調されたレーザビームからなる光学像が照射されて静電潜像が形成される。続いて、現像装置13からトナーが供給されて感光ドラム10の静電潜像のみに付着することによりトナー像Tが形成される。この例では、感光ドラム10は負極性に一様帯電されて反転現像用の静電潜像が形成された後、負極性に帯電したトナーにより現像されるため、負極性に帯電したトナー像Tが形成されるようになっている。
【0057】
続いて、このトナー像Tの形成タイミングにあわせて、給紙トレイ15からは所定のサイズや種類の記録用紙Pが1枚ずつフィードロール15aにて送り出され、レジストロール16によりタイミング調整された後に転写ニップ部Nにむけて送り出される。この転写ニップNを記録用紙Pの先端が通過する直前にコントローラ19からの指示に基づいて、バイアス電源23から所定の電圧(V0)または所定の電流(I0)が印加される。
【0058】
これにより、記録用紙Pは、感光ドラム10と対向する転写ニップ部Nに送り込まれた後、転写搬送ベルト20表面に静電吸着され感光ドラム10に対し適正な速度でこの転写ニップ部Nにおいて感光ドラム10からトナー像Tが静電的に転写される。トナー像Tが転写された記録用紙Pは、支持ロール22により支持される転写搬送ベルト20の部分でそのベルトから分離して剥離された後、定着装置17に送り込まれてトナー像Tの定着処理が施され、最後に装置外部に排出される。以上により画像が形成される。
【0059】
本発明の画像形成装置は、転写搬送ベルト20として本発明の弾性ベルトを用いているので、表面が平滑で、使用時のトナーや用紙との剥離性が良好で、耐久性に優れ抵抗変化が抑えられ、長時間でも安定した用紙吸着性と用紙搬送性が得られ、転写特性上も安定する。
また、本発明の弾性ベルトは、中間転写ベルトとして用いたときも、転写搬送ベルトとして用いたときと同様の効果が得られる。
【実施例】
【0060】
<実施例1〜5、比較例1〜3>
下記表1に記載の配合の試料をニーダー混練(55Lスケール,加圧ニーダー使用、100℃,20分混練)し、該混合物をプレス成形(真空、50tプレス,160℃,15分成形)でベルト状に加工して、所定の厚み(500μm)に研磨し、内径84mm、幅313mmのベルト基材(基材弾性層)を作製した。更に、得られたベルト基材の体積固有抵抗率を測定した。その結果(常用対数値)についても表1に記載した。
尚、表中の数字は質量部を表し、イオン導電材であるトリエチルベンジルクロライドは、1質量部を水5mlに溶解させて用いた。
尚、体積固有抵抗率の常用対数値は、アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計を用いて三菱油化製HRプローブ(JIS-K6911)により、測定環境23℃55%RH,、印加電圧500v,10秒後の値を測定することにより求めたものである。
【0061】
【表1】
【0062】
次に、下記表2に記載の配合の試料をサンドミル分散して得られた表面層用塗布液を、先に作製したベルト基材の外表面にデイップコートして、厚みが10μmの表面層を有する弾性ベルトを得た。尚、表面層用塗布液は、塗布液における固形分濃度を制御することにより、ベルト基材の外表面に塗布した場合に、厚みが10μm付近になるように溶液粘度を調整した。
尚、表2中、バイロン300及びUR3210は、メラミン(ベッカミンG821−60)を10質量%配合し硬化させたものである。また、SP712及びJYL820は、クロスネートD−70を10質量%配合し硬化させたものである。
【0063】
【表2】
【0064】
得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の弾性ベルトを、富士ゼロックス製Docucentre705CPに、転写搬送ベルトとして装着し、下記の測定・評価を行なった。
(表面粗さRz)
30000枚コピー後の転写搬送ベルト(弾性ベルト)の表面粗さRzを下記手順で測定した。その結果を表3に示す。
23℃55RH%の環境下において、接触式表面粗さ測定装置(サーフコム570A、東京精密社製)を用いた。転写搬送ベルト表面の測定に際しては、測定距離を2.5mmとし、接触針としてはその先端がダイヤモンド(5μmR、90°円錐)のものを用い、場所を変えて3回繰り返し測定した際の平均値を帯電部材の十点平均表面粗さRzとして求めた。
【0065】
(トナー・紙粉離型性)
30000枚コピー後の転写搬送ベルトのトナー・紙粉離型性を目視により評価した。その結果を表3に示す。
○:トナー、紙粉のフィルミング、汚れが発生している。
×:トナー、紙粉のフィルミング、汚れが発生していない。
【0066】
(摩擦係数)
30000枚コピー後の転写搬送ベルトの摩擦係数を下記手順で測定した。その結果を表3に示す。
静動摩擦係数計(協和界面科学社製)を用いて、直径3mmの鋼球を用い、移動速度0.1cm/秒、荷重100gの条件で測定した静動摩擦係数を本発明における摩擦係数とした。
【0067】
(耐久性)
30000枚コピー後の転写搬送ベルトのクラックを目視により評価した。その結果を表3に示す。
○:クラックが発生している。
×:クラックが発生している。
【0068】
(体積固有抵抗率)
転写搬送ベルトとして装着した弾性ベルトの初期と30000枚コピー後の体積固有抵抗率を下記手順で測定した。その結果を常用対数値として表3に示す。
アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計を用いて三菱油化製HRプローブ(JIS-K6911)により、測定環境23℃55%RH,、印加電圧500v,10秒後の値を測定することにより体積固有抵抗率を求めた。
【0069】
【表3】
【0070】
実施例1〜5の弾性ベルトに比べ、比較例1〜3の弾性ベルトは、30000枚コピーすることによる抵抗変化が著しく、表面付着物や磨耗による影響で、ブレードクリーニング磨耗と表面性の悪化が目立った。比較例1〜3の弾性ベルトは、初期の摩擦係数は低いものはあるが、すぐに変化し、トナー、紙成分のフィルミング,汚れが発生・固着されやすい。また基材抵抗が変化に呼応して表面層の異物付着の影響を受けやすく、放電生成物の影響によるクリーニング不良などが発生している。また、比較例1〜3の弾性ベルトは、イオン導電材を用いているので、そのイオン成分は表面層にトラップされて逆に表面部分に蓄積されやすく、画質上での裏面汚れのほかベルト抵抗値の環境変動も大きくなり特に高温高湿時(10℃,15%RH)の転写不良も発生した。