【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、音叉の場合には、基準周波数の音ではあるが楽器そのものと音色が異なり合わせづらい。マスター音等の手本となる音は、その楽器の音色や減衰特性を反映されているが、そのかわり標準周波数が判別しにくく、特に初心者にとっては音色や減衰特性の中から標準周波数を聞き分けるのが難しいものとなっている。一方、標準周波数を有する一定振幅の音を電子音で合成しこれを連続して鳴らすものは、標準周波数が判別しやすいが、実際の楽器の有する音色や減衰特性がないため、十分な音の比較ができない。例えば、標準周波数を有する一定振幅の連続音に重ねて楽器の試音を弾いても、その比較がしづらい。また、第6弦解放音を基準にして合わせこむ方法では、基準となる音が出ていないため、聴覚による合わせこみと異なってくることがある。
【0006】
このように、従来技術においては基準となる音と試音との比較がしづらく、調律が不十分なものとなっている。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決し、基準となる音と試音との比較がより容易となるチューニング支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るチューニング支援装置は、参照音を出力し、参照音に楽器の音を合わせこむ楽器のチューニングを支援するチューニング支援装置であって、楽器からチューニング対象の音を試みに出力させ、その試音を取得する試音取得手段と、チューニング対象の音に対応する参照音を出力する参照音出力手段と、取得した試音の周波数と参照音の周波数の相違を判定し、その結果を出力する判定出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、参照音出力手段は、チューニング対象の音について標準となる基本周波数である標準基本周波数のみを周波数成分として有し一定振幅の音である第1参照音と、チューニング対象の音の標準基本周波数のみを周波数成分として有しその音におけるその楽器のもつ減衰特性を有する音である第2参照音と、その音におけるその楽器のもつ音色と減衰特性とを有する音の周波数を標準基本周波数に合わせた第3参照音と、の中の少なくとも1つの参照音を出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るチューニング支援装置は、さらに参照音作成手段を備え、参照音作成手段は、チューニング対象の音について標準となる基本周波数である標準基本周波数のみを周波数成分として有する一定振幅の音を断続的に出すように合成した第1参照音と、標準基本周波数のみを周波数成分として有する音に対しその音のもつ減衰特性を付加した第2参照音と、チューニング対象の音である試音を取得し、試音の基本周波数である試音基本周波数を解析し、チューニング対象の音についてその基本周波数を標準基本周波数に合わせこんだ第3参照音と、の中の少なくとも1つの参照音を作成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るチューニング支援装置において、参照音作成手段は複数の参照音を作成し、さらに、複数の参照音の中から、楽器の音を合わせこむ段階に応じて参照音の種類を選択する選択手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るチューニング支援装置において、参照音出力手段を制御し、試音を取得するのに同期して参照音を出力させる制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、判定出力手段は、試音の基本周波数である試音基本周波数と標準基本周波数との相違を判定し、試音基本周波数と標準基本周波数との相違に応じて異なる判定音又は判定音声を出力することが好ましい。また、判定出力手段は、試音基本周波数が標準基本周波数に近づいてくるに従い、参照音の音量を大きくして、これを判定音とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るチューニング支援装置において、判定出力手段が、試音基本周波数と標準基本周波数との相違が合わせこみ範囲に入っていないと判定するときは、判定手段は合わせこみ継続を知らせる判定音を出力し、参照音出力手段は、参照音を再び出力し、判定出力手段が、試音基本周波数と標準基本周波数との相違が合わせこみ範囲に入っていると判定するときは、判定手段は合わせこみ完了を知らせる判定音を出力し、参照音出力手段は、次のチューニング対象の音に対応する参照音を出力することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るチューニング支援装置において、マスター楽器の音を取得するマスター音取得手段と、取得したマスター楽器の音を解析し、その基本周波数を求める解析手段と、を備え、解析されたマスター楽器の音の基本周波数を標準基本周波数とすることが好ましい。
【0016】
また、試音取得手段は、楽器に取り付けられる焦電性高分子フィルム又は圧電素子であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るチューニング支援装置は、参照音を出力して、楽器のチューニングを支援するチューニング支援装置であって、チューニング対象の音について標準となる基本周波数である標準基本周波数のみを周波数成分として有する一定振幅の参照音を断続的に出力することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るチューニング支援装置は、参照音を出力して、楽器のチューニングを支援するチューニング支援装置であって、チューニング対象の音について標準となる基本周波数である標準基本周波数のみを周波数成分として有する音に対しその音のもつ減衰特性を付加した参照音を出力することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るチューニング支援装置は、参照音を出力して、楽器のチューニングを支援するチューニング支援装置であって、チューニング対象の音である試音を取得する試音取得手段と、試音の基本周波数である試音基本周波数を解析する試音解析手段と、試音について標準となる基本周波数である標準基本周波数に、試音の基本周波数を合わせこんだ参照音を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るチューニング支援装置は、参照音を出力して、楽器のチューニングを支援するチューニング支援装置であって、複数の参照音を記憶する参照音記憶手段と、複数の参照音の中から1の参照音を選択して出力する出力手段と、を備え、参照音記憶手段は、チューニング対象の音について標準となる基本周波数である標準基本周波数のみを周波数成分として有し一定振幅の音である第1参照音と、チューニング対象の音の標準基本周波数のみを周波数成分として有しその音におけるその楽器のもつ減衰特性を有する音である第2参照音と、その音におけるその楽器のもつ音色と減衰特性とを有する音の周波数を標準基本周波数に合わせた第3参照音との3つの参照音の中の少なくともいずれか2つの参照音を記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記構成により、試音を取得するとともに参照音を出力し、試音と参照音との相違を判定する。したがって、聴覚により試音と参照音とを比較して楽器の調律を行うとともに、取得した試音と参照音との相違を出力して、調律を支援することができる。このように、聴覚による相違の判断と、判定出力手段による判定とにより調律の程度を判断できるので、基準となる参照音と試音との比較がしやすい。
【0022】
また、参照音としては、チューニング対象の音についての標準基本周波数を共通にする3種類の参照音のいずれかを用いる。第1参照音は、周波数成分として標準基本周波数のみを有し一定振幅であり、かつ断続音であるので、試音の基本周波数と標準基本周波数との聞き分けが容易である。断続音であることで、耳の馴れを防止し、聞き分けがさらに容易になる。第2参照音は、周波数成分として標準基本周波数のみを有しさらにその楽器の減衰特性を有しているので、試音と重ねて聞くときに試音の基本周波数と標準基本周波数との聞き分けが容易である。第3参照音は、音色も減衰特性もそのままにしてチューニング対象の音についてその基本周波数を標準基本周波数に合わせこんだ音であるので、聴覚による音全体としての比較が容易である。
【0023】
これらの参照音の特質を楽器の音を合わせこむ段階に応じて使い分けることにより、基準となる参照音と試音との比較がしやすくなる。一例をあげると、初期の粗調のときに第3参照音を用いて音全体を近づけ、次の微調においては第1又は第2参照音を用いて標準基本周波数を聞き分け易くして合わせる。さらに必要があれば、標準基本周波数の合わせこみができた後に、もう一度第3参照音を用いて音全体の聞き分けを行って、音色や減衰特性による聴覚の相違を細かくあわせこむことができる。
【0024】
また、これらの参照音の作成は、チューニング対象の音の標準基本周波数と楽器又は試音の音色、減衰特性に基づいて行われる。すなわち、第1参照音は標準基本周波数の音をそのまま一定振幅として作成し、第2参照音は、試音を取得してその減衰特性を解析し、あるいは予め解析しておいた楽器のその音の減衰特性を用いて作成することができる。また、第3参照音とは、試音を取得しその標準基本周波数を解析し、その結果に基づいて試音を合わせこむことで作成される。したがって、チューニング対象の音を元にして第2及び第3参照音が作成されるため、試音と、第2及び第3参照音との間で音色や減衰特性が同じものとなって、比較がしやすくなる。
【0025】
また、試音の取得に同期して参照音を出力する。ここで同期は、同時同期及び遅延同期等を含む広い概念である。例えば、試音とほぼ同時に参照音を出力してもよく、また、試音の減衰が終わってから参照音を出力するものとしてもよい。すなわち、参照音は連続に出されるのでなく、試音に対応し、断続的に出される。このことで、連続的に参照音を聞くことによる聴覚の馴れを防止でき、参照音と試音との比較をいつも新鮮な聴覚でおこなうことができる。
【0026】
また、試音と参照音との相違の判定は、基本周波数の相違で行う。調律は、周波数のあわせこみだからである。そして、基本周波数の相違に応じて異なる判定音を出す。判定音に代えて、判定音声を出力することもできる。例えば、あわせこみが不十分なときは継続を知らせる音とし、あわせこみが所定範囲に入ってきたときは完了を知らせる音とし、その区別が明確にできるようにする。あるいは音声を用いて、「弦を緩めて下さい」、「弦を張って下さい」「だんだん合ってきました」等の知らせを行ってもよい。したがって目をつぶってあわせこみを行うことができ、聴覚に注意を集中でき、基準となる参照音と試音との比較がよりしやすくなる。また、あわせこみが基本周波数に近づくにつれ、参照音の音量を次第に上げてゆくことで、合わせこみの状態の把握がより容易になる。
【0027】
標準基本周波数としては、チューニング対象の音に対し一般に基準と認められる基準周波数があるので、これをメモリに記憶して用いることができる。また、手本とするマスター楽器を基準としたいときは、マスター楽器の音を取得し、その基本周波数を解析した結果を用いることができる。
【0028】
また、焦電性高分子フィルムを楽器に取り付け試音取得手段として用いる。焦電性高分子フィルムは小型軽量であるので、楽器に取り付けても余分な共振等が起こりにくく、調律音に影響を与えることが少ない。焦電性高分子フィルムに代えて圧電素子を用いてもよい。したがって、チューニング支援装置そのものを楽器に取り付けることが可能になる。
【0029】
また、本発明に係るチューニング支援装置は、参照音を出力するのみの構成でもよい。その参照音としては、チューニング対象の音についての標準基本周波数を共通にする3種類の参照音の中の参照音を用いることができる。第1の参照音は、周波数成分として標準基本周波数のみを有し一定振幅であり、かつ断続音であるので、試音の基本周波数と標準基本周波数との聞き分けが容易である。断続音であることで、耳の馴れを防止し、聞き分けがさらに容易になる。第2の参照音は、周波数成分として標準基本周波数のみを有しさらにその楽器の減衰特性を有しているので、試音と重ねて聞くときに試音の基本周波数と標準基本周波数との聞き分けが容易である。第3の参照音は、音色も減衰特性もそのままにしてチューニング対象の音についてその基本周波数を標準基本周波数に合わせこんだ音であるので、聴覚による音全体としての比較が容易である。これら3種類の参照音のうち、いずれか1つの参照音のみを保持してそれを出力するものとすることで構成が簡単になる。また、3種類の参照音の中の少なくともいずれか2つ、例えば第1の参照音と第2の参照音、又は第2の参照音と第3の参照音、又は第3の参照音と第1の参照音、又は3種類の参照音の全部、を記憶装置に保持し、その中から1つの参照音を選択して出力するものとすることで、例えばチューニングの状態に応じて参照音の種類を選択でき、よりきめ細かなチューニングが可能となる。
【0030】
以上のように、本発明に係るチューニング支援装置によれば、基準となる音と試音との比較がより容易となる。
【実施例1】
【0032】
図1は、チューニング支援装置10が用いられる様子を示す図である。演奏者4は、演奏に先立って、緩めてあった各弦を適当な張力となるように調整し、ギター2の特定の弦について特定の音を出すようにして試し弾きを行う。その際にチューニング支援装置10を用い、参照音を出させ、試し弾きの試音と聴覚による比較を行う。チューニング支援装置10は、試音を取得し、参照音との比較を行って、その判定結果を音で知らせる。したがって、演奏者は、参照音を用いて聴覚によってあわせこむことができるとともに、チューニング支援装置10の知らせ音によりあわせこみの判定結果をも知ることができる。
【0033】
図2は、チューニング支援装置10のブロック図である。チューニング支援装置10は、マイク12、直流カットコンデンサ14、増幅器16、バンドパスフィルタ18を含んで構成される試音取得部分と、増幅器20、スピーカ22を含んで構成される参照音及び判定音出力部と、取得された試音を受け取って各種の信号処理を行い、参照音及び判定音を出力するメインCPU50を備える。また、メインCPU50は、I/O78を介して試音収録メモリ24、基本周波数メモリ26、各種スイッチあるいは表示等28と相互に接続される。これらの各要素は、回路基板上に組み立てられ、筐体内部に収納されて図1に示すようなコンパクトなチューニング支援装置10となる。
【0034】
マイク12は、チューニング対象となる楽器の音を採取する集音装置で、一般の小型マイクを用いることができる。好ましくは音楽用マイクを用いることがよい。直流カットコンデンサ14、増幅器16、バンドパスフィルタ18は、一般に知られる電子部品等で構成でき、マイク12の特性とメインCPU50のA/D変換部52の性能に合わせて条件等を設定することができる。
【0035】
スピーカ22は、参照音及び判定音を出力する発音体で、できるだけ楽器の音を再現できる性能のスピーカが好ましい。スピーカ22の性能に合わせて楽器の音に近い再現音となるようにメインCPU50の中で参照音及び判定音のデータを補正することもできる。増幅器20は一般に知られる電子部品等で構成することができる。
【0036】
試音収録メモリ24は、マイク12によって採取されメインCPU50においてディジタル化された楽器の音データを一時記憶する記憶装置である。試音収録メモリ24として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを用いることができる。
【0037】
基本周波数メモリ26は、参照音に用いられる基本周波数のデータを記憶する装置である。基本周波数のデータは、楽器の種類、音を識別する弦番号等の識別番号、オプション事項等に関連付けて格納される。例えばマスター楽器を用いたギターの第6弦の基本周波数のデータは、(楽器:ギター)、(弦番号:6)、(オプション事項:マスター楽器)のデータ階層で区別されて格納される。基本周波数メモリ26として、例えば、フラッシュメモリ等の半導体メモリを用いることができる。
【0038】
各種スイッチあるいは表示等は、図示されていない筐体に設けられた各種の押しボタン、テンキー、ボリュームスイッチ等の入力スイッチ類、あるいはLED、液晶ディスプレイ等の出力素子類である。これらの入力スイッチ類を用いて演奏者等のユーザが、チューニング対象の楽器や音の種類を入力し、あるいはチューニング条件を設定することができる。また、出力素子等を用いて、チューニング支援装置の動作状況をユーザに知らせることができる。
【0039】
メインCPU50は、受け取った試音をディジタル信号に変換し、各種のディジタル信号処理を行って、各種の参照音を合成し、参照音と試音との間の基本周波数の差を演算して調律の程度を判定して判定に対応する判定音を合成し、合成された参照音及び判定音を再びアナログ信号に変換して出力する機能を有する制御ICで、一般的なマイクロプロセッサで構成することができる。より具体的には、図3に示すように、参照音に用いられる標準基本周波数をティーチングにより更新するティーチング処理(S10)と、標準基本周波数と試音とに基づいて参照音を作成保持する参照音作成処理(S12)と、作成された参照音を出力する参照音出力処理(S14)と、試音と参照音との相違を判定するチューニング判定処理(S16)を実行する機能を有する。これらの機能に対応する処理を行うにはソフトウエアを用いることができ、対応するチューニング支援プログラムを実行することで所定の処理を行うことができる。処理の一部を外部に設けたハードウエアで実行させることもできる。
【0040】
図2に示すメインCPU50の構成要素の中で、A/D変換部52は、マイク12から取得した音信号をディジタル信号に変換する機能を有する回路であり、D/A変換部76は、参照音あるいは判定音のディジタルデータをアナログ信号に変換してスピーカ22に出力する機能を有する回路である。また、I/O部78は、試音収録メモリ24と基本周波数メモリ26とデータの交信をし、また図示されていない筐体に設けられた各種スイッチあるいは表示等28と交信してユーザによる選択指示を受け取り、必要なデータを出力する機能を有するインタフェイス回路である。
【0041】
メインCPU50における試音収録処理部54等の各構成要素の詳細な機能については、図3に示す4つの処理機能に分け、それぞれのフローチャートを用いて以下に説明する。最初に標準基本周波数ティーチング処理(S10)について説明し、順次参照音作成処理(S12)、参照音出力処理(S14)、チューニング判定処理(S16)について述べる。
【0042】
図4は、ティーチング処理における手順を示すフローチャートである。ティーチング処理とは、参照音を作成する元となる標準基本周波数を定める処理で、具体的にはCPU50のティーチング処理部55が図4に示す手順のティーチングを実行して、チューニング対象の音に対する標準基本周波数を更新する。
【0043】
ユーザがティーチング処理を行うことを選択するには、各種スイッチあるいは表示等28におけるスイッチ等により行う。これによりティーチング処理部55が処理の実行を開始する。最初に、ティーチングの方法につき3つの選択肢が与えられる(S20)。すなわちメモリ読出法(S22−S30)、手動入力法(S32−S40)、自動入力法(S42−S54)である。ユーザはスイッチ等によりいずれか1を選択することができる。
【0044】
メモリ読出法(S22−S30)は、予め基本周波数メモリ26に格納されている基本周波数を読み出して、その値をチューニング対象の音の標準基本周波数として更新する方法である。具体的には、基本周波数メモリ26のデータ構造に従い、楽器選択(S24)、弦番号選択(S26)を行って基本周波数を特定して読み出す。必要な場合オプション事項を入力してもよい。これらの選択データの入力はスイッチ等から行うことができる。例えば、S24でギター、S26で第6弦と選択入力すると、基本周波数メモリ26から、f=82.41Hzが読み出され、この値がこの後の参照音作成に用いられる標準基本周波数のデータとして更新(S28)される。
【0045】
手動入力法(S32−S40)は、ユーザが標準基本周波数データを直接入力して更新する方法である。具体的には、弦番号選択(S34)を行った後、周波数データを入力(S36)して更新(S38)を行う。必要なときは楽器、オプション事項等の入力を行ってもよい。例えば、S34で第6弦と選択入力し、S36でf=82.21Hzと入力すると、基本周波数メモリ26に記憶されているデータと異なる値に標準基本周波数を更新できる。このことで、一般的に基準基本周波数と認められている周波数と異なる基本周波数の参照音を作成でき、これに基づきチューニングを行うことで、一味違う演奏が可能になる。
【0046】
自動入力法(S42−S54)は、マスター楽器等の手本とする楽器の音が有する基本周波数を標準基本周波数とする場合に、手本とする楽器の対象音を取得し、その音を解析し、得られる基本周波数に標準基本周波数を更新する方法である。具体的には、弦番号選択(S44)を行った後、手本となる楽器の弦を弾き、その音を検出(S46)して一旦収録する(S48)。その収録された音について基本周波数を解析する(S50)。得られた基本周波数を標準基本周波数として更新する(S52)。必要なときは楽器、オプション事項等の入力を行ってもよい。例えば、S44で第6弦と選択入力し、S50でf=82.45Hzと解析されると、その値に標準基本周波数を更新できる。
【0047】
手本とする楽器の音の収録(S48)は試音収録処理部54の機能により行われる。すなわち、マイク12によって採取された音声データは直流カットコンデンサ14、増幅器16、バンドパスフィルタ18を経由してA/D変換部52によりディジタルデータに変換される。そのデータは、試音収録処理部54の機能により、適切なフォーマットを用いて試音収録メモリ24に収録される。
【0048】
図5は、楽器を試し弾きしたときの音をマイク12で取得した状態を示す図である。横軸は弦を試し弾きしてからの時間、縦軸は、マイク12の出力電圧である。試音を収録するには、弦をはじいたときの指の音が混じる初期の時間Δtにおけるデータを除くことが好ましい。Δtの期間を除いた音データからその音の基本周波数を解析するのは、基本周波数解析部56の機能による。
【0049】
基本周波数解析部56は、試音収録メモリ24から該当する音データを読み出し、その音データについてピーク検出法によりその音の基本周波数を解析する。例えば図5の例では、Δtの期間を除いた音データについて周知のピーク検出技術によりピークを検出すると、図5において黒点で示す基本周波数を有する波についてのピークが検出される。このピークの数を所定時間について計測すれば、その音についての基本周波数を求めることができる。あるいは、高速フーリエ変換器を用い、最も発生頻度の高い周波数をその音の基本周波数として求めることもできる。
【0050】
次に、ティーチング処理により更新された標準基準周波数f
0と、試音に基づいて参照音を作成する作成音作成処理について説明する。図6は、参照音作成の手順を示すフローチャートである。
【0051】
ユーザが参照音作成処理を行うことを選択するには、スイッチ等により行う。これにより試音収録処理部54等が参照音作成処理の実行を開始する。最初に、ユーザがチューニング対象の弦を試し弾きする。これを試音収録処理部54の機能により、弦音を検出(S60)し、その試音を収録する(S62)。図4の試音収録工程(S48)に関連して説明したように、弦をはじいたときの指の音が混じる初期の時間Δtにおけるデータが除かれて試音収録メモリ24に収録される。この収録された試音についてその音の基本周波数が解析される(S64)。この工程は基本周波数解析部56の機能により行われ、図4の基本周波数解析工程(S50)に関連して説明したように、ピーク検出法又は高速フーリエ変換器を用いる方法を適用して試音の基本周波数f
aを求めることができる。
【0052】
次に同じ試音データを用いて、その音の減衰特性が解析される(S66)。この工程は減衰特性解析部58の機能により行われる。試音の減衰特性の解析は、図5においてピーク検出法で検出された各ピークの座標(t,v)に基づき、包絡線を最小二乗法等で求める方法により行うことができる。ここで各ピークの座標は(時間,電圧)としてとることができる。図5には、このようにして求めた減衰特性e
-btと、基本周波数をf
aとして、試音の基本波の式を示してある。
【0053】
このようにして、標準基本周波数f
0、試音の基本周波数である試音基本周波数f
a、その減衰特性e
-btが揃うと、これらを用いて、標準基本周波数f
0を共通にする3つの参照音が作成される。第1参照音作成(S68)は、標準基本周波数f
0のみを周波数成分として有し、振幅が一定値の音を第1参照音として合成する工程である。例えば、標準正弦波データを用いて横軸を標準基本周波数f
0の時間軸に合わせ、縦軸をスピーカ22に供給する電圧の値に合わせることで第1参照音のデータを作成できる。図7に第1参照音100の様子を横軸に時間、縦軸に電圧をとって示す。
【0054】
第2参照音作成(S70)は、標準基本周波数f
0のみを周波数成分として有する音に、試音の減衰特性e
-btを付与し、これを第2参照音として合成する工程である。図8に第2参照音102の様子を示す。横軸、縦軸は図7と同じである。また、試音の減衰特性e
-btは、楽器のその音に固有であるので、一度解析した特性をメモリに記憶させ、これを読み出して標準基本周波数f
0のみを周波数成分として有する音に付与して合成する方法で作成することもできる。
【0055】
第3参照音作成(S72)は、試音について、その音の形をそのままにして、試音基本周波数f
aを標準基本周波数f
0にあわせこんだ音を第3参照音として作成する工程である。図9は、そのあわせこみを説明する図である。試音についてその基本周波数をf
aとし、基本波長をλ
aとする。チューニングによりあわせこみたい標準基本周波数をf
0、その基本波長をλ
aとする。ここで数波長分、例えば8波長分時間を考えて、試音について8波長分(λ
a)の時間をT
aとすると、T
0=(f
0/f
a)×T
aとなるように、試音の波形を時間軸に関して伸縮する。このことで、減衰特性を同じとし、高調波成分による音色を同じとし、基本周波数をf
aから標準基本周波数f
0にあわせこんだ音が作成できる。この音を第3参照音とする。図10に第3参照音104の様子を示す。横軸、縦軸は図7と同じである。但し、高調波成分は定性的に示してある。
【0056】
このようにして解析された試音基本周波数は、判定部68に入力され、後述する試音と参照音との間の相違判定に用いられる。また、作成された第1参照音、第2参照音、第3参照音は、それぞれの保持メモリ62,64,66に保持される。
【0057】
次に、作成された参照音を出力する参照音出力処理について説明する。図11は、参照音出力工程80の詳細フローチャートで、参照音出力のいくつかの出力モードについての手順を示すものである。
【0058】
ユーザが参照音出力処理を行うことを選択するには、スイッチ等により行う。これにより選択・出力制御部60等が参照音出力処理の実行を開始する。最初に、参照音出力モードにつき3つの選択肢が与えられる(S82)。すなわち参照音3を出力するモードa(S84−S88)、第1参照音又は第2参照音を出力するモードb(S90−S94)、第3参照音の出力の後、第1参照音又は第2参照音を出力するモードc(S96−S104)である。ユーザはスイッチ等によりいずれか1を選択することができる。第1参照音又は第2参照音の出力の場合には、さらにどちらを選択するかを定めることができる。
【0059】
モードa(S84−S88)においては、まず弦音検出(S86)し、その音が十分減衰したのを確認した後に参照音3を出力する(S88)。これに対し、モードb(S90−S94)においては、まず弦音検出(S92)し、そのすぐあとに参照音1又は参照音2を出力する(S94)。ここで、すぐあととは、試音が減衰するのを待つ必要がなく、という意味である。選択・出力制御部60は、第1参照音保持メモリ62、第2参照音保持メモリ64、第3参照音保持メモリ66から、所定の参照音データを読み出し、所定のタイミングでD/A部76に出力する。このことでスピーカ22から選択されたモードの内容どおりに参照音が出力される。
【0060】
モードaとモードbとで参照音の出力するタイミングを変えたのは、第3参照音と第1又は第2参照音の相違からである。すなわち、第3参照音は、試音と同じ音色、同じ減衰特性を有し、単に基準周波数が異なるのみであるから、試音を十分減衰させ、第3参照音のみをよく聞ける状態にしたほうが好ましいのに対し、第1又は第2参照音は試音の高調波成分が除かれているので、試音と重ねて聞くほうがむしろその違いの聞き分けが容易だからである。
【0061】
モードcは、モードaのあとにモードbを行うものである。すなわち弦音検出(S98)し、その音が十分減衰したのを確認した後に参照音3を出力する(S100)。その後に再び弦音検出(S102)し、そのすぐあとに参照音1又は参照音2を出力する(S104)。この手順を用いることで、チューニングを粗調と微調の2段階に分けて行うことができる。例えば、チューニングを行うにあたり、最初に試音と音色、減衰特性が同じである第3参照音で粗い合わせこみを(例えばS100とS102の間に)行い、その後、基本周波数が聞き分けやすい第1参照音又は第2参照音を用いてチューニング対象の音の基本周波数を標準基本周波数にあわせる微調を(例えばS104のあとで)行うことができる。
【0062】
モードa,b,cにおいて、弦音の検出を行ってから参照音を出力する。これは、参照音の出力を連続的なものとせず、試し弾きに同期して行うことで、聴覚の慣れを防止し、常に新鮮な聴覚で参照音を聞き分けるようにするためである。したがって、参照音の出力時間は、試音の減衰時間と同程度の長さ、例えば、4秒程度が好ましい。
【0063】
次にチューニング判定処理について説明する。上記のように、参照音出力工程においては、試音検出−参照音出力が繰り返される。試音検出が行われると、検出された試音は試音収録処理部54の機能により試音収録メモリ24に一旦収録され、この収録された試音につき基本周波数解析部56の機能により、試音基本周波数f
aが解析され、その結果は判定部68に送られる。この手順は、図6において基本周波数解析工程(S64)に関連して説明したものと同じ内容である。また、判定部には、基本周波数メモリ26から、標準基準周波数f
0のデータが入力される。
【0064】
このように、参照音出力工程における弦音検出工程(S86,S92,S98,S102)においては、同時にその試音基本周波数f
aが解析され、判定部68において、標準基準周波数f
0と比較され、チューニングの程度が判定される。
【0065】
図12は、参照音出力工程80も含んだチューニング全体のフローチャートを示したものである。参照音出力工程(S80)においては、上記のように参照音が出力されるとともに試音基本周波数f
aが解析される。次に、試音と参照音の相違が比較される(S110)。具体的には、試音基本周波数f
aと標準基準周波数f
0のデータが減算器又は比較器に入力される。試音と参照音の相違の判定は、f
aとf
0の周波数差が、予め設定されたしきい値Δfを超えないか否かで行われる。しきい値Δfは、固定の一定値として予め設定してもよく、あるいは、任意の値に設定可能としてもよい。例えば、チューニングをはじめる前に、チューニング難易度としてユーザがその値を設定するようにしてもよい。
【0066】
試音と参照音の相違の比較は、試音の周波数特性が安定している期間に行うのが好ましい。図13は、試音の周波数特性の安定期間を説明する図である。図13(a)は、試音の振幅を電圧として縦軸にとり、横軸に試し弾きからの時間をとってある。図13(b),(c)は、試音の周波数スペクトルを示すもので、横軸は標準基本周波数f
0を単位とした周波数である。試音は、試し弾きをした当初の期間t
1は、図13(b)に示すように、指や爪の音が入るほかに、周波数スペクトルが安定しない。その後、周波数スペクトルが図13(c)に示すように安定する期間t
2があり、それを過ぎると、また周波数スペクトルがやや乱れてくる。例えば、t
1は約1秒、t
2は約2−3秒程度である。そこで、この安定する期間t
2を利用して試音と参照音の相違の比較を行うのが好ましい。
【0067】
具体的には、この期間に、参照音を聞かせるとともに、試音と参照音の相違に応じた判定音又は判定音声を出力して演奏者にチューニングの程度を知らせ、演奏者は知らされたチューニングの程度に応じて例えばペグを調整する。このとき、弦は弾かないようにすれば、試音は、減衰特性を同じにして、周波数のみが変化する。したがって、この調弦された新たな周波数を解析し、参照音との相違をさらに演奏者に知らせることができる。これを期間t
2の間に行えばよい。
【0068】
試音と参照音の相違の程度を知らせるのに、参照音の音量を変えることが好ましい。すなわち、期間t
2の間に、調弦があってくるにつれ参照音の音量を大きくすれば、演奏者は、目をつぶって聴覚に神経を集中したまま、容易に試音と参照音の相違を知ることができる。一例として、図14に、標準基本周波数f
0に合ったときに、参照音の音量を最大とし、±1Hzのときは音量を最大値の半分等とするものを示した。
【0069】
図15、図16は、期間t
2の間にペグ等を調整する調弦を行い、その合わせこみに応じて参照音の音量を変えて出力する様子を示すものである。これらの図はいずれも横軸に時間、縦軸に音量を示す電圧をとってある。図15は期間t
2の間に1回調弦を行い、それによりかなり試音の基本周波数が合ってきた様子を示す。図16は、期間t
2の間に数回調弦を行い、標準基本周波数にほとんど合わせこみができ、参照音の音量が最大となった例を示す。
【0070】
なお、試音と参照音の相違の程度を知らせるのに、判定音声を用いてもよい。判定音声によれば、例えば、「弦を緩めて下さい」、「弦を張って下さい」等のきめ細かい知らせを行うことができるが、その分時間を要し、期間t
2の間の調弦が制限されることがある。
【0071】
上記のように調弦が進み、f
aとf
0の周波数差がしきい値Δfを超えないと判定されると、OK通知音がスピーカ22から出力される(S114)。具体的には、判定部68が、OK通知音メモリ70から所定の通知音データを読み出し、これをD/A変換部76に出力する。OK通知音としては、心地よいメロディでもよく、あるいは音声でOKを通知してもよく、上記のように、出力している参照音の音量を最大にして知らせてもよい。
【0072】
OK通知音が出力されると、次に第3参照音が出力される(S116)。これは、チューニングがあるレベルに達しているが、最終的に試音と音色と減衰特性が同じ第3参照音でより微妙なチューニングを行うためである。したがって、弦音検出のあとに第3参照音を出力するのが好ましい。
【0073】
その後、次の調整弦がないか確認する(S118)。確認は、ユーザがスイッチ等で入力してもよいが、ティーチング処理において弦番号を知らせているので、そのデータを用いてもよい。次の調整弦がないと判断されると、最終的に完了確認(S120)が行われる。確認は、スイッチ等によりユーザの入力により行うことができる。完了が確認されると、例えば完了音が完了音メモリ74から読み出されて出力され、これでチューニングが終了する。
【0074】
S112において、f
aとf
0の周波数差がしきい値Δf以上であると判定されると、NG通知音がスピーカ22から出力される(S122)。具体的には、判定部68が、NG通知音メモリ72から所定の通知音データを読み出し、これをD/A変換部76に出力する。NG通知音としては、やや心地よくないメロディでもよく、あるいは音声でNGを通知してもよく、もっと好ましくは、出力している参照音にうなりを付与して知らせてもよい。図17は、うなり周波数Fで参照音を変調した一例を示す図である。うなり周波数Fは、f
aとf
0の周波数差に応じて変えるものとしてもよい。例えば大きく周波数差があるほどうなり周波数Fを高くするものとしてもよい。
【0075】
S118において、次の調整弦が有ると確認されると、参照音出力工程(S80)の最初に戻る。その際、次弦があることを知らせる通知音を出力する(S124)。ティーチング処理において弦番号を知らせている場合には、参照音出力工程(S80)において自動的に次の弦の参照音を出力するようにしてもよい。
【0076】
S120において、ユーザがもう一度チェックしたいと希望するときは、再び参照音出力工程(S80)の最初に戻る。このときには、参照音出力工程(S80)において自動的に前と同じ参照音を出力するようにしてもよい。
【0077】
上記において、チューニング支援として、標準基本周波数ティーチング処理(S10)、参照音作成処理(S12)、参照音出力処理(S14)、チューニング判定処理(S16)と順に行われるものとして説明したが、チューニングする楽器が1つの場合等においては、標準基本周波数ティーチング処理(S10)と参照音作成処理(S12)を予め行っておき、通常は、弦の指定を行って、参照音出力処理(S14)とチューニング判定処理(S16)を行うものとすることができる。
【0078】
また、上記において、チューニングの状態を知らせる手段として音を用いるものとした。これにより、ユーザは目をつむって聴覚に注意を集中してチューニングを行うことができる。この他に、各種スイッチあるいは表示等28におけるLED、ディスプレイ等を用いてチューニングの状態をより詳しく知らせるものとしてもよい。この場合には、視覚により、詳細なチューニング状態を知ることができる。