【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ボールミルによる混練・分散を用いて金属ペーストを製造しようとすると、ボール同士の衝突やボールと壁面の衝突による磨耗によって、金属ペースト内に不純物が入ることがある。また、目的とする金属ペーストの分散状態まで金属フィラーの粒径を小さくするためには、ボールもそれに応じて小さくしなければならないが、ボールが小さくなると生産性が悪くなる、という問題が生じる。
【0005】
ニーダーを用いて金属ペーストを製造しようとすると、容器壁面に未分散の滞留箇所が発生し、金属フィラーをペースト材の全体へ均一に分散させることは困難である。
【0006】
ロールミルを用いて金属ペーストを製造する場合は、金属フィラーの粒径を所定のサイズ迄小さくするためにロール間のギャップを調整し、ギャップを段階的に狭めながら何度もロールに通しながら製造することとなる。このため生産性が悪いという問題がある。
ここで、生産性を上げるためにロール間のギャップを一挙に狭くすると、金属フィラーが展性を示すため、押しつぶされてフィラーの箔(金属箔)が生成してしまい、金属ペーストとしては不良品となってしまう。
【0007】
一般的に必要とされる、印刷性に優れた金属ペーストにおいて、その粘度特性は、ずり速度2s
−1で回転する回転粘度計による測定値で60(Pa・s)以上、または、ずり速度10s
−1で回転する回転粘度計による測定値で30(Pa・s)以上であることが求められ、かつ、前記ずり速度2s
−1で回転する回転粘度計による測定値をη2、ずり速度10s
−1で回転する回転粘度計による測定値をη10としたとき、(η2/η10)の値として定義される「チクソ比」の値が1.5〜2.5の範囲にあることが求められる。
さらに、当該印刷性に優れた金属ペーストは、含有する金属フィラーの最大粒子径が50μm以下であることが求められる。
しかし、コロイドミルでこのような印刷性に優れた金属ペーストを製造しようとして、コロイドミル内の砥石の隙間を調整し、当該ペースト材料をコロイドミル内の砥石の隙間に送り込んでも、ペースト材の粘性が高いため、ここを通過させることが困難で、金属ペーストを製造することが出来なかった。
【0008】
ここで、本発明者らは前駆的な発明として、ペースト材中に含有されるアルコール類などの溶剤の添加量を調整し、当該ペースト材の粘度を下げた後、コロイドミルを用いて金属ペーストを製造することを試みた。その結果、ペースト材の粘度が、後述する回転粘度計による粘度測定において、ずり速度2s
−1の値で40(Pa・s)以下、およびずり速度10s
−1の値で20(Pa・s)以下であると、コロイドミルを用いた金属ペーストの製造が可能となることを見出した。ところが、当該粘度範囲を満足するペースト材から製造された金属ペーストは、溶剤の含有量が過剰であるため、金属ペースト本来の使用目的には好ましくないものとなった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、金属を主成分とするフィラーが分散性良く混ざり合った金属ペーストを、金属の箔を生成させることなく、低コストで生産性良く製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、金属フィラーを混練・分散処理して混合分散体として金属を含む金属ペーストの製造方法において、その分散体の材料である金属フィラーを含むペースト材の温度を、室温以上の所定温度に保つことで当該ペースト材の粘度を低下させてコロイドミル内の砥石の隙間に送り込むと、金属フィラーが高い分散性を示す金属ペーストを製造できること、さらには、当該ペースト材に正圧および/または負圧を加えながらコロイドミル内の砥石の隙間に送り込むことで、高い生産性もって金属ペーストを製造できることに想到し、本発明をなすことができた。
【0011】
すなわち、本発明の第1の手段は、所定の間隙で相対しながら相対的に回転させられる砥石の隙間に、金属フィラーを含むペースト状材料(以下、ペースト材)を送り込んで混練・分散させて、前記金属フィラーを前記ペースト材中に混合分散させる金属ペーストの製造方法であって、
前記ペースト材の温度を、前記ペースト材が前記一対の砥石の隙間を通過できる粘度となる温度以上に保ちながら、前記混練・分散を行うことを特徴とする金属ペーストの製造方法である。
【0012】
本発明の第2の手段は、前記砥石の隙間間隔がdg、前記ペースト材中の金属フィラーの最大粒子径がdmであるとき、前記砥石の隙間間隔dgを(1/5)dmから2dmの範囲に調整して、前記金属フィラーを前記ペースト材中に混練・分散させることを特徴とする第1の手段に記載の金属ペーストの製造方法である。
【0013】
本発明の第3の手段は、前記ペースト材の温度を、
前記ペースト材の粘度が、ずり速度2s
−1で回転する回転粘度計の測定値で10〜40(Pa・s)、およびずり速度10s
−1で回転する回転粘度計の測定値で2〜20(Pa・s)の範囲に入る温度に保つことを特徴とする第1または第2の手段に記載の金属ペーストの製造方法である。
【0014】
本発明の第4の手段は、前記ペースト材の温度を、40℃〜80℃に保つことを特徴とする第1から第3のいずれかの手段に記載の金属ペーストの製造方法である。
【0015】
本発明の第5の手段は、前記砥石に送り込まれるペースト材と、前記砥石から送り出されるペースト材との間に0.01MPa〜0.5MPaの圧力差を与えながら、前記混練・分散処理を行うことを特徴とする第1から第4のいずれかの手段に記載の金属ペーストの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
金属を主成分とするフィラーが分散性良く混ざり合った金属ペーストを、金属の箔を生成させることなく、低コストで生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、ペースト材の温度と粘度との関係、および当該ペースト材が、コロイドミル内の上下側回転砥石間の隙間を通過する際の条件について、図4を参照しながら説明する。
図4は、縦軸にペースト材の粘度(Pa・s)をとり、横軸にペースト材の温度(℃)をとったグラフである。
ペースト材の粘度測定は、回転粘度計(米国ブルックフィールド社製デジタル・レオメータ−形式DV−III)スピンドル番号CP52を用い、回転粘度計のずり速度を、2s
−1および10s
−1に設定して測定した。測定温度は、25゜Cから75゜Cの範囲で計測した。
ここで、回転粘度計のずり速度を、2s
−1および10s
−1に設定して測定するのは、当該ペースト材がチクソトロピー性を有しているため、当該チクソトロピー性を見込んだ粘度を把握するために、速いずり速度、および遅いずり速度の両方で粘度を測定することが好ましいからである。図4においては、ずり速度2s
−1のときのプロットを実線で、ずり速度10s
−1のときのプロットを破線で示した。
また、当該ペースト材としては、金属ペーストとして標準的な組成を有する試料として、金属粉として銀粉170g、樹脂としてアクリル樹脂9g、溶剤としてテルピネオール24g、およびフィラーとしてガラス粉(日本電気硝子製GA−8)5gとを混ぜて予備混練したものを用いた。
【0018】
図4から明らかなように、ペースト材の粘度は、温度の上昇と共に低下してゆき、当該ペースト材においては、40℃以上、さらに好ましくは50℃以上で、コロイドミルで処理が可能な、ずり速度2s
−1の値で40(Pa・s)以下、およびずり速度10s
−1の値で20(Pa・s)以下の粘度に到達することが判明した。
ここで、ペースト材の温度を過剰に昇温すると、当該ペースト材中に含有される溶剤が揮散したり、含有される樹脂が硬化を開始したりして、製造される金属ペーストの性状が変化してしまうことが懸念される。そこでこのような事態を回避するために、ペースト材の昇温は80℃以下に留めておくことが好ましい。
【0019】
ここで本発明者らは、当該ペースト材を、後述する被処理材の温度調節が可能なコロイドミルを用い、ペースト材の粘度がコロイドミルで処理が可能な粘度となる温度に保ちながら、混練・分散処理の検討をおこなった。この検討から、ペースト材を製造する際のコロイドミルの上下側回転砥石間の隙間をdgとし、処理前のペースト材中の金属フィラーの最大粒子径がdmのとき、dg>(1/5)dmであると金属箔の生成が抑制されることが判明した。また、dg<2dmであるとペースト材が、砥石間で混練される時間が十分確保できるので、高い分散性が得られ好ましい。すなわち、dgを(1/5)dm<dg<2dmの範囲とすることで、高品質な金属ペーストを製造することが出来ることが判明した。
【0020】
この混練・分散処理の結果、銀を主成分とするフィラーが分散性良く混ざり合った金属ペーストを、銀の箔を生成させることなく製造することが出来た。これは、ペースト材の温度を上げることで、ペースト材中の樹脂の粘性が下がるとともに、樹脂と金属との反応性および塗れ性も上がり、金属フィラーの分散効果が向上し、金属箔の生成が抑制された為ではないかと考えられる。さらに、製造された金属ペーストの温度を室温に戻すことで、その粘度を、金属ペースト本来の目的に適したものに戻すことがでた。
【0021】
そして、金属ペーストの原料として用いられる範囲の金属ペースト材において、溶剤種、溶剤含有量、フィラーとして用いられる金属種を代えても、同様に当該金属種を主成分とするフィラーが分散性良く混ざり合った金属ペーストを、当該金属種の箔を生成させることなく製造することが出来た。
【0022】
さらに、上述の検討から、ペースト材をコロイドミルの上下側回転砥石間の隙間を通過させる際、回転砥石に送り込まれるペースト材と、回転砥石から送り出されるペースト材との間に0.01MPa〜0.5MPaの圧力差を与えながら送り込むことで、金属ペーストの生産性を向上させることが出来ることを見出した。ペースト材に当該圧力差を与える方法としては、回転砥石に送り込まれるペースト材に直接圧力をかける方法、コロイドミル内に設置されたペースト材へ圧縮空気等の圧力媒体を介して圧力をかける方法、上下側回転砥石の周囲を減圧する方法等があり、いずれかの方法、または、これらの方法を併用することができる。その際、当該圧力差は、その範囲が0.01MPaから0.5MPaの範囲であると、製造される金属ペーストの品質も良く、後述するコロイドミルの装置コストも嵩まないことから好ましい。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
まず、図面を参照しながら、本発明による金属ペーストの製造に使用するコロイドミルについて説明する。図1は、コロイドミルの一例の要部概略を示す省略断面図である。
【0024】
図1において、回転するディスク20上に設けられた下側砥石11は所定の間隙dgをもって上側砥石12と相対している。ここで上側砥石12は上部ハウジング21に固定されているため、ディスク20の回転に伴い上下側砥石11,12は相対的に回転させられる。上下側砥石11,12の隙間間隔dgは、後述する上側砥石12の上下動により所定値に調整可能になっている。尚、ディスク20は、回転可能で気密を保ちながら、下部ハウジング25の底部を貫通している。
【0025】
下側砥石11はその上面に、中心から外周縁に向けて上向する下側傾斜面13を形成されており、上側砥石12にも、下側傾斜面13に相対して、その下面に中心から外周縁に向けて下向する上側傾斜面14を形成されており、この下側傾斜面13と上側傾斜面14とにより砥石内空洞16が形成される。上側傾斜面14は、さらに上側砥石12の相対回転軸を中心として設けられた原料投入部15に連続し、原料投入部15は上部ハウジング21に設けられた原料投入口22につながる。原料投入口22上にはさらに原料投入筒23が設けられ、その先端は加圧口24となる。ここで、上側砥石12、原料投入口22、および原料投入筒23は、着脱可能ながら気密に接続されている。砥石内空洞16内から原料投入口22内には、ペースト材10が充填され、その温度は温度センサーSにより測温されている。
【0026】
さらに、上下側砥石11,12は、上部ハウジング21と下部ハウジング25とにより気密状態に保たれている。ここで上部ハウジング21は、回転自在で螺旋溝を有し下部ハウジング25に支持された支柱30に、当該螺旋溝を介して支持されている。支柱30は複数本あり、これを回転させることで、上部下部ハウジング21、25間の間隔を拡縮可能である。そして、この上部下部ハウジング21、25間の間隔の拡縮により、上下側砥石11,12の隙間間隔dgの調整がなされる。尚、上部下部ハウジング21、25は、摺動可能な真空シール31を介して接合されているので、ハウジング内の気密を保ちながら上部下部ハウジング21、25間の間隔の拡縮が可能である。
【0027】
また、上部ハウジング21または下部ハウジング25の適宜な場所に減圧口29が設けられ、ここに排気装置を接続し排気することで、ハウジング内部を負圧とすることが出来る。さらに、上部ハウジング21の上側砥石12と接する天井面内には、温度温度調整用空洞26が穿たれており、外部より温度調整用出入口27、28を介して所望温度の熱媒体を流通させることで、上下側砥石11,12を所望の温度に調整することができる。
【0028】
次に当該コロイドミルを用いた、金属ペーストの製造方法例について説明する。
ペースト材10の試料としては、 銀粉170gとアクリル樹脂9gとテルピネオール24gとガラス粉(日本電気硝子製GA−8)5gとを混ぜて予備混練したものを準備した。
ここで、予備混練により得られたペースト材中のフィラーの状態を調査するために、グラインドゲージにより残留粒子の大きさの最大値を計測した結果を図2(予備処理後)のグラフに示す。図2(予備処理後)のグラフは、縦軸に粒子径を採り、横軸に当該径を有する粒子の存在頻度を採ったグラフである。図2(予備処理後)のグラフに示すように、ペースト材中の粒子径は45μm以上であり、最大粒子径dmは60μmであった。
【0029】
コロイドミルには、直径100mmの上下側砥石11,12砥石を設置した。
砥石の隙間間隔(dg)の値は、50μmに設定した場合と、30μmに設定した場合との2つの値を設けた。
当該コロイドミルにて金属ペーストを製造する際は、予め、温度調整用出入口27、28を介して70℃の水を、温度温度調整用空洞26内に流通させ、上下側砥石11,12を70℃に保った。
【0030】
上下側砥石11,12が70℃となったら、ペースト材10を原料投入口22内に設置し、上部ハウジング21上に原料投入筒23を気密に設置した後、下側砥石11を500rpmで回転させた。そして、原料投入筒23に設けられた圧入口24から窒素を約5L/min、圧力0.05MPaで流し、ペースト材10を上下側砥石11,12の間の隙間に押し込みながら混練・分散処理をおこなった。(本実施例では、減圧口29は閉鎖してある。)このとき、ペースト材10の温度を温度センサーSにより常時測定し、69℃〜70℃となるよう、温度温度調整用空洞26内を流通する水の温度を制御した。
【0031】
1分間処理したところ、金属ペーストの吐出量として砥石の隙間間隔(dg)を50μmに設定した場合は200g、30μmに設定した場合は50gが得られ、コンパクトな分散装置でありながら、高い生産能力が得られた。また、得られた金属ペースト中のフィラーの状態を調査するために、ペースト材に行ったのと同様に、グラインドゲージにより残留粒子の大きさの最大値を計測した結果を図2(本処理後)に示す。図2に示すように、
砥石の隙間間隔(dg)を50μmに設定した場合は、粒子径は45〜25μmに分布を持ち、45μ以上の粒子は計測されなかった。同様に(dg)を30μmに設定した場合は、粒子径は25μm以下に分布を持ち、30μ以上の粒子は計測されなかった。この結果、実施例1に係る本処理後は、予備練処理後に対して、十分に高い分散状態になっている上、金属箔の生成も観察されず、得られた試料は金属ペーストとして良好な性状を有していた。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同様に予備混練にて調整したペースト材を、ロールミル(平行に並んだ3本のロールを相互に回転方向が逆になるように回転させ、各ロールの隙間にペーストを通過させることで、処理物を混練分散させる装置)に投入し、混練分散を行った。
【0033】
このとき、ロールミルの隙間は順次140μm、100μm、40μmと3段階に狭めて各段階でサンプルを採取しながら行った。
【0034】
(比較例2)
さらに、比較例1において、予備混練後1回目から、ロールミルの隙間を40μmに狭めて処理したサンプルも作製した。
【0035】
各比較例1と2で作製したサンプルの残留粒子の大きさを、実施例1と同様にグラインドゲージで測定した結果を図3に示す。(図3は、図2と同様のグラフである。)
【0036】
図3が示すように、比較例1では、3段階の処理後でようやく高い分散状態が得られたが、各隙間間隔の設定等に時間がかかり、生産性が非常に低かった。
【0037】
一方、比較例2では、一気に高い分散性を得ようとロールミルの隙間を狭い隙間に設定したが図3が示すように、分散状態は向上せず、且つ、金属フィラーの箔が観察された。
【0038】
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能であり、たとえばペーストの組成物質は上記実施例以外の物質も利用可能である。